PIOピアノ雑記帳

ピアノ、クラシック音楽関連の話題を主とした雑記帳blogです。

カテゴリ:【音楽コンクール】 > 浜松国際ピアノコンクール

BS日テレ 2019年3月30日(土)7:00am ~放映

チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
ピアノ:牛田智大
指揮:小林研一郎
オーケストラ:読売日本交響楽団

(2019年2月14日 サントリーホールにて収録)

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遅ればせながら、録画視聴の記録を。

演奏前のインタビューが面白かったです。
12歳でCDデビューし、マスコミでもてはやされた頃の妙に老成した受け答えは、事前に文言を丸暗記した結果によるもので、活舌がよくなり過ぎた感があったとのこと。
いやいや、
今の受け答えも実にさわやか。好青年度満点!という感じです。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲の個人的な解釈、イメージを問われて、次のように答えていました。
  • 第1楽章は、人間の力の及ばない、大自然の偉大さ。
  • 第2楽章は、ロシアの冬。中間部のワルツは暖炉でくつろぐ家族の姿。
  • 第3楽章は、春に向けて高まる期待。
なるほど。イメージ力、大切ですね。
重厚な和音でピアノが入る冒頭部については、
  • 待っている間の5小節は本当に緊張する。
  • ピアノを強く印象づけなくてはいけないが、弦楽器のメロディーを邪魔してはダメ。そのバランスが難しく、いつも迷う。
「誠実」そのもの、といった印象を受けました。
20歳を目前に、脱皮したいとの思いがあるように見えますが(浜松国際で、周囲の反対を押し切ってリストのソナタを入れたり、リサイタルのプログラムを大幅に入れ替えたり…)、ずいぶん早い時期から注目を集め、活動してきたプロには避けて通れない道ともいえるのでしょうか。

オーケストラとの合わせは、堂々としたものでした。
私としては、第1楽章カデンツァの軽やかな連打とか、2楽章のワルツの部分とか、
やはり軽さ、柔らかさ、
そして、随所にみられる歌い上げる表現に魅力を覚えました。
3楽章のオケとの掛け合いも軽やかでした。
楽章がすすむごとに、自由闊達な雰囲気が増してきたような。
最終部クライマックス、コンクール等ではピアノが一人で走ったりしがちですが、そんなことは全くなく、オケとぴったり合っていました。

「勇壮さ」を目指す、牛田新路線(?)、
ピアノソロのリサイタルでは違和感を感じたのですが、
協奏曲においては功を奏しているといえるでしょうか。
そういえば、
浜松国際の採点表が公開されていましたが(→http://www.hipic.jp/pdf/result.pdf)、
ファイナルについては、第1回目投票で1位のチャクムル君と同票。
2回目の投票で1,2位が決まったようです。
協奏曲では僅差だった、ということですね。
(とはいえ、第1次、2次、3次と、チャクムル君がずっと牛田君より上位…というかほぼ1位独占。チャクムル君の優勝は審査委員一同納得の結果だったでしょう。)

牛田君の今後に注目ですね。

1月15日(火)の朝6時半ごろ、NHKニュース「おはよう日本」で、
浜コンの調律師さんの奮闘ぶりが紹介されていました。

朝食を準備しつつ、偶然片手間に見ただけで、画像もなにもないのですが、
取材対象は、カワイ担当の調律師さん。

調律師さんを追った番組といえば、前回のショパコンでの
「もうひとつのショパン・コンクール~ピアノ調律師たちの闘い」
が印象に残っています。
ちょっと、その二番煎じのような感も?

でも、本選でカワイを選んだのが優勝したチャクムルさんだけだった
ということもあって、なかなかスリリングな構成でした。
14日の番組とは異なり、チャクムルさんの姿を、発言をバッチリ捉えていました。
唸ったのは、本選のリハーサルを終えてからの彼のリクエスト。
高音部の一つの黒鍵を何度か叩いてみせて、

「この音の響きが、他の鍵盤と違う。立ち上がりが遅い」

といったようなことを、両手を使ったジェスチャーとともにアピールしていました。
「調整しきれていなかった箇所を見事に指摘された。一流のピアニストは違う」
と舌を巻く調律師さん。
ピアノ調整に与えられる時間が短いことにもびっくり。
「あと18分」
などと言われて、まさにねじり鉢巻き、集中力の権化のようになっておられました。

そういえば、14日の番組でも、第1次予選に臨む牛田くんが
「1次は20分しかないから、第一音の立ち上がりからインパクトのある音色を出さなくてはいけない。それが可能な、自分に合ったピアノを選ぶのは、とても大事なこと。」
と、ピアノによってタッチの深さ、返ってくる音色の感覚に差があること等を説明していました。

  • コンクールでは、自分の良さを生かす楽器の選択眼が求められ、
  • 公演にあたっては、どんな楽器にあたっても最善の演奏をする技量が求められる
プロって、そういうものなのですね。
浜コンの公式インタビューでも、審査員の先生方が
「ピアノの選択眼は大きなポイント」
という発言をされていました。
「プロとして世に立っていけるだけの人物を見つけ出すのがコンクール」と。

たしかに、優勝が決まった後のチャクムルさんの立ち居振る舞いに器の大きさを感じました。
優勝した嬉しさ炸裂!という行動ではないのです。
ごくごく自然に、周囲の方々への感謝の念にあふれている、という振る舞い。
こういうところも、いや、こういうところこそ、大事なのでしょうね。

調律師さんとチャクムルさん、放映されたのはごく数分でしたが、
真摯なお二人の姿に、なんだか自分の器の小ささが思い知られて反省してしまいました。

2019-01-15
画像は本選(リストのP協奏曲)最後の一音の場面。
浜コンホームページ、チャクムルさんの公式インタビューより転載。

2019年1月14日(月)15:00-16:00 BSプレミアム

昨年11月に行われた第10回浜松国際ピアノコンクールに密着取材、直木賞を受賞した恩田陸の小説『蜜蜂と遠来』を重ね合わせた番組、という宣伝がなされていましたが、実際は、、、
「牛田智大くんに密着」した番組でした。
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優勝したトルコの20歳、ジャン・チャクムル君はまったく取材されてなくて、あれれ~残念。
NHKが取材対象に選んだのは、どうやら次の5人。

 12歳でCDデビューした日本のピアノ王子、牛田 智大くん(19歳)
 最年少の参加者、中学生の八木 大輔くん(14歳)
 ベルリンの大学院に在学中、坂本 彩さん(29歳)
 最年長の参加者、兼重 稔宏(としひろ)氏(30歳)
 韓国のピアノ王子、イ・ヒョクくん(18歳)

の坂本さん、
2016年の仙台国際音楽コンクールで本選まで進まれていて、ネット中継での見覚えがありました。(→セミファイナル結果発表
現在ベルリン在住で、離日は7年前とのこと。 
ベルリンの部屋が取材されていましたが、部屋にピアノはなく、通っている大学院でピアノ練習をしているそうです。「演奏家としてのフィールドを広げたい」という発言、先日の左手のための国際コンクールに参加されていた女性ピアニストの方のことも思い出されます。
2次には進めませんでしたが、雑誌『ショパン』が1次予選の良い演奏に取り上げていました。

の兼重さん、
2次進出者として少し取り上げられただけでしたが、
「10代ではこのステージで演奏するレベルではなかった。今が一番いい機会かな」
といった発言が印象に残りました。
第2次予選のバルトーク、個人的には30歳の深さがあると感じましたよ。

のイ・ヒョクくん、
ヴァイオリンも弾きこなし、チェスの大会でも活躍するというマルチ才能ぶり、
流暢な英語で受け答えをする飄々とした大物ぶりに脱帽です。
でも、その内容は、コンクールの公式インタビューの方が深いかもしれません。

さて、番組の中心、
の牛田智大くんです。
密着取材を許可したって、まずそこが大物だなあと思いました。
拠点のうちの一つ、倉敷にある彼の部屋のピアノ(グランドピアノが2台!1台はサイレント)、レッスン室、ステージ、そして浜松駅構内のピアノ、さまざまな場所での演奏風景が流れましたが、
牛田くんの演奏よりも、くらしき作陽大学の指導者、ロシア人ピアニストの弾くプロコフィエフの一節の方が印象に残りました。
「文化的じゃない音」で弾かなきゃ。
「コンクール用に丁寧に弾きたいの?」
ほんと、分厚い爆音に恐れ入りました。

牛田くん自身の、一次の演奏(レッスンを受けたプロコフィエフのソナタ)後、コメントを求められてもなかなか言葉が出てこず、やっと出たのが
「ま、これで終わりです」。
満足していない様子でしたが、私もネット中継を聴いて、通過が一番心配になったのが第1次でした。
第2次以降は、安心して聴いていられましたよ。

中村紘子氏との関係などは既に知っている情報でしたし、彼についてもこの番組よりも公式インタビューのほうが読み応えがあるのではないかと。。。


『蜜蜂と遠雷』の朗読も、番組と深くリンクして心に響く……というわけでもなかったかな。
ちょっと肩透かしのようにも感じた番組でした。

そして牛田くん、
「コンクールでいただいた結果に恥じない演奏をしていかなくては。これからのほうが大変」
と、優等生的な発言をしていましたが、それなら、入賞者披露演奏会にも出ましょうよ。
(公式ホームぺージには「第2位 牛田智大さんは、スケジュールの都合により出演されません」との記載が…。)

【追記】
1. コメントくださった方からの情報で、入賞者披露演奏会の時期には、コンクール前から牛田君とプレトニョフ指揮ロシアナショナル管弦楽団との公演(@ロシア)が発表されていたと知りました。確かに
海外公演のスケジュール変更は難しいでしょうね。既にプロとして活動している人気ピアニストならではの事情と言えるでしょう。
2. それで、こんな忙しさなら、やっぱり牛田君がアニメ「ピアノの森」のヒミツの演奏者役を担当するなんて無理かもな~と思ったのでした。。。
3. 作曲家名の誤りについてもコメントいただき、訂正しました。
 

浜コン公式記事から。
審査委員長・小川範子氏へのインタビューです。(画像も同記事から借用)
2018-12-28

  • コンテスタントに順位をつける場
としてコンクールを捉えるのではなく、
  • 輝く才能を持ったピアニストのデビューに、力を貸す場
  • 若いピアニスト同士の出会いの場
  • 浜松で生活する人々、そこに集った人々と、若いピアニストたちをつなげる場
といった捉え方をしているのだなあ、と感じました。
(上はPIOの主観で要約した内容で、小川氏の言葉の引用ではありませんが)


チャクムルくんが優勝した理由の3点目として挙げられた

(3)舞台に出ることが自然な出来事であり、室内楽、協奏曲において、他の奏者との関係を築くことができ、マナーがしっかりしている。

という指摘に、なるほどと思いました。
「今すぐ演奏活動を始めてもらいたい」と思うからには、大事なポイントであると。
優勝後、実務的な話をした中でも、彼の対処能力の高さを実感したそうです。
チャクムル君が、このコンクールの助けを得て無事に「音楽家としての離陸」をしたら、「あとは自分の力で飛び続けてほしい」という表現、いいですね。

こういう将来を見据えて、コンテスタントの演奏を聴き、審査するからこそ、1番目に挙げていた

(1)自分の伝えたい音楽がハッキリしている。舞台がコンクールであることを忘れさせてくれる演奏。慣れ親しんだ曲でも、こんな解釈があったのかと思わせる新解釈を、説得力をもって挑戦、披露してくれた。

という演奏が、審査のポイントになるのですよね。
(2)それを支える演奏技術がある 
というように、テクニックは「音楽を支え」ていてこそ、生きるわけです。心底共感。


各ステージの結果発表で「次のステージで演奏していただきたい方は・・・」とアナウンスした意図、
「今田君、務川君、安並君は、「侍トリオ」とお呼びしたいくらい、彼らの潔い姿勢、真摯な姿勢、音楽にまっすぐに取り組む姿勢に強い共感と感動を覚えました。」
といった表現にも、小川氏の人柄が表れています。
審査員同士のあたたかい雰囲気を伝える写真も印象的です。

このコンクール、運営がすばらしいとの評判ですが、
この公式インタビューの質の高さ(内容も、それに添えられる写真も)も出色だと思いました。

副題「第10回浜松国際ピアノコンクール88の軌跡」
88という数字、ピアノの鍵盤の数でもあり、今回演奏したコンテスタントの人数でもあり。

「あの感動がよみがえる! 1st・2ndステージ厳選CDつき」
編集部によって厳選された演奏は次の通りです。太字は演奏時間

1次予選
  1. 坂本彩(日本)グバイドゥーリナ:《シャコンヌ》8:57
  2. 佐川和冴(日本)ショパン:エチュードOp.10-5《黒鍵》1:49
  3. キム・ソンヒョン(韓国)メンデルスゾーン:無言歌集第6巻より《紡ぎ歌》1:48
  4. 太田糸音(日本)プロコフィエフ:4つの練習曲よりOp.2-1 2:17
  5. ドミトロー・チョニ(ウクライナ)リスト:《巡礼の年》第1年「スイス」より〈ジュネーヴの鐘〉6:22
  6. フィリップ・ジョイヒャー(オーストリア)ベートーヴェン:《幻想曲》10:00
  7. アンドレイ・シチコ(ベラルーシ)リスト:パガニーニによる大練習曲第3番《ラ・カンパネラ》4:46
  8. アリョーシャ・ユリニッチ(クロアチア)ショパン:エチュードOp.25-1《エオリアン・ハープ》2:18
2次予選
  1. 牛田智大(日本)ショパン:バラード第1番 9:35
  2. キム・ソンヒョン(韓国)シューマン:幻想小曲集Op.12より《飛翔》3:03
  3. キム・ソンヒョン(韓国)シューマン:幻想小曲集Op.12より《夢のもつれ》2:15
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ほとんど聴けなかったなかで「これは!」と思った、太田糸音さんの1次演奏、
これは保存したいと思った、牛田君のバラード1番が入っていてうれしいです。
できれば、チャクムル君の3次、シューベルトのソナタも保存したかったけれど、これは時間的に収録不可能でしょうね。1次、2次に絞ったのは、時間の問題もあるんだろうな、と思います。
キム・ソンヒョン君が3曲も入っていますが、それぞれ時間が短いからこそ、でしょう。

1次で「この人の演奏をもっと聴きたい!」と心底私は思った、ソン・ユル君(18歳・韓国→11月13日記事)について、編集部も次のように書いていました。

ラモー:新クラヴサン組曲より《エンハーモニック》と《エジプトの女》は、クリーンな音色によるシャープな演奏。ショパン:エチュード作品10の10も音楽性にあふれ、リスト:《メフィストワルツ》第1番は現代を生きる若者のセンスが横溢!いかなるハイテンポにおいてもテクニックは冴えわたり、音楽も息づいている。2次も聴きたかった一人。

ざっと斜め読みしただけなので、また後ほど熟読したいと思います。

浜コン公式記事から。
本選に残り、第6位となった安並貴史さんへのインタビューです。(画像も同記事から借用)

2018-12-10

(本選の)6人の中に入ることができたのは、僕にとって驚きでした。3次の結果のときに、僕か!と思って、そのときから驚いていました。
結果については、逆に安心したところがあります。自分の中で演奏に納得がいっていなかったので。一つ勉強になりました。

なんと、これまで留学経験なしだそうです。
大学院の博士課程でドホナーニを研究中で、
島村楽器の音楽教室の講師など、教えるお仕事もしながらコンクールに挑戦。
「蜜蜂と遠雷」の高島明石と重なると見る人々も。
その音楽教室は我が家からも遠くないようです。びっくり。

音楽教室では2週連続の休暇しかとれなかったため、
本選の直前に浜松を一時離れて、レッスンに赴いたのだとか。
そして、コンクールのことなど念頭にない生徒にも接して実感したのが、

ああ、コンクールはある世界のほんの一部のことでしかないんだよなと、ハッと我に返るみたいなところがありました(笑)。

こういうスタンスで、是非これからも音楽に関わっていっていただきたい。
他にもピアノ選定の仕方とか、興味深いお話がたくさんなのですが、中でも
恩師とあおぐ方の言葉にハッとしました。
修士課程のあと、いったん社会に出ようと決めたときにかけられた言葉。

「君は我々が博士課程を勧める中で社会に出ていくけれど、この後は、自分の力で我々を振り向かせられるような、そういう人生を送りなさい」とおっしゃったのです。あの言葉があったから、今の自分がいると思います。

含蓄のある、心に響く言葉です。

浜コンの審査員を務められた
ヤン・イラーチェク・フォン・アルニン氏のインタビュー記事
が掲載されました。

私、氏の大ファンです。
2016年3月、
浜松アカデミーのオープニング・コンサートと、公開レッスンに心底しびれました。

今回の発言も、深いです。読み応えばっちりです。
印象に残ったところを貼り付けます。(下線、太字は PIOの主観で施したもの)
2018-11-30

ー例えば10代半ばの若い才能を評価するとき、その後本物の音楽家になる可能性がありそうだという判断は、どこで見極めるのでしょう?

 それはみんなが知りたい疑問ですね(笑)。多くの要素が備わっていなくてはなりません。まず優れたテクニックが必要なのはひとつ。加えて大切なのは、演奏する喜びを感じている人かどうかです。

 例えば、私はクリスチャンで教会に行きますが、そこで神父が聖書について語るとき、この人物が、読んだことを本当の意味で理解しているか、想像力やカリスマ性があるか、そして、人の心を惹きつける魔法のような力を持っているかは、瞬時にわかります。一方で、例え神父として長い経験がある人でも、自分はなんでまたここに立ってこの話をしないといけないんだ...などと思っている人なら、わかります。誰かの話を聞いたとき、それがあなたに語りかけてくるかどうかは、すぐにわかるものです。とはいえ、とても若い人は何かのきっかけで才能が花開かずに終わることも、さらには自分で音楽家にならないと決めてしまうこともあるかもしれません。でも、ひとりでも多くの才能ある人にチャンスを与えることは大切です。

 あまりに低年齢だと、優勝には若すぎるという意見が出ることもあるかもしれませんが、それに影響されてその人がチャンスを失うべきではないと私は思います。個人的には、歳は関係なく、その音楽が自分に語りかけるか否かだけを重視したいと思います。


ーコンクールの選曲で気をつけるべきことはなんでしょうか。

 私は基本的に気を使ってものを言うほうです。相手に敬意を払い、理解しようとしています。ですが今回ははっきりいって、コンペティターのプログラムの選択に何度もフラストレーションを感じたと言わねばなりません。多くの人が、誤った選択をしていました。例えば、どれだけたくさんの人がリストのピアノソナタを選んだでしょう...それは果たして、3次予選に最善の選択といえたのでしょうか?

 自分がリストのソナタを誰よりもすばらしく演奏できると思うのなら、3次予選で弾けばいいと思います。でも、もし確信しきれていないのなら、もしくは少しでも明確でない部分があるのなら、そこで演奏すべきではありません。一生懸命練習したと思いますが、このステージでその曲を演奏することがどういう意味を持つのかを、彼らは全然わかっていないと思いました。もちろん、一番大切なのは才能や音楽家としての精神が優れていることですが、才能があることをどのように伝えるかは、コンクールではとても重要なことです

 単に、誰かが3年前にこれを弾いて優勝したみたいだから選ぼう、ということではダメなんです。ベートーヴェンのソナタだって、Op.109やOp.110ばかり選んで弾いているんですから...もっと別の作品、たとえばOp.22なんかを選んでもいいのに、なぜ晩年のソナタばかり選択するのでしょう。怒りすら感じましたね。


ー審査する中で、次のステージに進んでほしいと思うのはどういうピアニストでしたか?

 言葉で説明することは簡単ではありません。今回は、みんなが技術的には高い水準で演奏しています。これは昔に比べると大きな進歩です。しかし私が本当に求めているのは、説得力のある音楽ができる人です。技術やレパートリーを披露するのではなく、本当に音楽で言いたいことがある人の演奏は、聴きたいと思います。

 このピアニストは本気で音楽をつくろうとしている、そして私に語りかけていると感じた時、自分はこういう人を求めていたのだと思います。そういう瞬間は、今回のコンクールでもありました。たくさんではありませんけれどね。


ー今の時代はコンクールが多く、優勝してもキャリアは約束されません。そんな厳しい時代を生き抜くために、若いピアニストはどうすべきなのでしょう?

 私はコンクールで優勝したこともありますが、自分のことを思い起こすと、コンクールでもっとも多くのものを得たのは、実は、ヴァン・クライバーンコンクールで「優勝できなかった」ときです(笑)。その時の演奏を聴いたマネージャーが私を信じてコンサートに招いてくれて、それを評論家が取り上げてくれたことがきっかけで、活動が広がりました。そこで、「優勝」よりもこうしたことが大切なのだと気づきました。

 どんなコンクールも、キャリアを保証してくれません。コンクールが目的としているのは、若者に聴かれる場を与えることです。今は、インターネットでも演奏を聴くことができ、2次予選に進めなかったコンペティターでも人に名前を覚えてもらえるチャンスがあります。

 また、コンクールはレパートリーを100パーセントの状態、全ての音がよく考えられている状態に準備する機会としても有効です。本選まで進めないこともあるかもしれませんが、自分が成功しなかった理由は何かを考えることこそが大切です。そしてそのとき、自分を駆り立ててもっと勉強すべきだと思うのか、それとも、これは自分の道ではないと決断するのか。これもまた重要です。みんながピアニストとして成功できるわけではありません。これ以上自分を鼓舞して学び続けることは難しいとか、向上は望めないと思ったときは、辛いかもしれませんが、ピアノの道を離れる決断を下す必要もあります

 音楽家の人生は厳しいものです。自分はすごいんだ、世界が自分を待っているんだと無理に言い聞かせ続けることは、意味がないんです。だって世界はあなたのことなど待っていないのですから。自分の本当の幸せを見つけなくてはいけません。

  • 第1位 No.10 ジャン・チャクムル Can CAKMUR 1997年生まれ
  • 第2位 No.79 牛田智大 USHIDA Tomoharu 1999年生まれ
  • 第3位 No.41 イ・ヒョク LEE Hyuk 2000年生まれ
  • 第4位 No.22 今田篤 IMADA Atsushi 1990年生まれ
  • 第5位 No.50 務川慧悟 MUKAWA keigo 1993年生まれ
  • 第6位 No.90 安並貴史 YASUNAMI Takashi 1992年生まれ
2018-11-24
ただいま、外出先より帰宅して、
浜コンホームページにアクセスしたら、もう出ていました。

なるほど~。
実は昨日、チャクムル君の第3次予選、室内楽の録画を見て、
自由闊達で楽し気なノリノリモーツァルトに舌を巻きました。
審査員へのインタビュー記事によると

「次の演奏が聴きたい」

と思わせるか否か、がコンクールでの一番の肝である!
みたいなことが共通して出ていましたが(こんな表現じゃなかったと思うけど💦)、
それで、
協奏曲を一番聴きたい!
と思わせるのは、このチャクムル君だ!と思ったのでした。
アーカイブが出たら、是非聴いてみたいです。

牛田君、入賞はするだろう
と思っていたので、個人的には、この結果に納得でございます。

ファイナルのストリーミング、問題なく聴けました。
ハイレゾではなく、普通の音声で。

  • 18:00 50 務川 慧悟
    S. プロコフィエフ:協奏曲 第3番 ハ長調 Op.26
  • 18:55 90 安並 貴史
    J. ブラームス:協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83
  • 20:15 79 牛田智大
    S. ラフマニノフ:協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18
2018-11-23 (2)
演奏に引き込まれて、画像撮影も忘れちゃいました。
はっと気づいたら終演になってしまっており、こんなおマヌケな画像しか撮れず。💦

牛田君、圧巻でした。
やはり冒頭からググっと聴衆の心をつかむ演奏……いったいどういうスゴ技なのやら。
オーケストラとの掛け合いっぷりもお見事でした。歌心貫徹。乱れなし。
なんか、破格のスケール感です。

務川君もよかったです。
歯切れよく、ノリノリのプロコ。
予選では、どちらかというと冷静沈着型、内省派の演奏のように見えたのですが、今日はアグレッシブに自ら楽しんでいる様子が伝わってきました。
第3楽章、ちょっとオケとズレた箇所があったような。故意にピアノが引っ張ったのかも…ですが。

安並君のブラームス、
丁寧な演奏という印象でした。
この曲についてよくわかってない私ですが💦、不用意なミスタッチが散見したようにも思います。


さて、明日の3人については残念ながらライブ視聴不可能。
後半の演奏は聴かずして、結果を知ることになりそうです。

演奏は全く聴けなかったのですが、発表はLIVEで見てしまいました。
発表時間も知らずにいたのですが、ほんと、偶然。
  1. ジャン・チャクムル (CAKMUR Can) トルコ 1997年生まれ
  2. 今田 篤 (IMADA Atsushi) 日本 1990年生まれ
  3. イ・ヒョク(Hyuk LEE) 韓国 2000年生まれ
  4. 務川 慧悟 (MUKAWA Keigo) 日本 1993年生まれ
  5. 牛田 智大 (USHIDA Tomoharu) 日本1999年生まれ
  6. 安並 貴史 (YASUNAMI Takashi) 日本1992年生まれ
2018-11-20 (2)
発表直後の6人。うち4人が日本人って、快挙と言えるのでは。
2次が聴けた牛田くん、務川くんが入って嬉しいです。
中央の安並さん、左端の今田さん、地元出身で注目度が特に高かったのだとか。注目されるのも疲れるのだろうなあ~と彼らの表情を見て思ったりしました。

2018-11-20 (3)

審査委員長の小川典子氏の講評は、
浜松の町全体が音楽に満ちていることへの喜びを述べたのみで、審査については発言がありませんでした。
記者から現在の心境を聞かれた際には「88鍵のピアノのコンクールのへの出場者が88人」だったこと、ファイナルの協奏曲がすべて異なることへ言及したのみ。
この6人が選ばれたことへのコメントも「彼らの演奏をもう一度聴いてみたい」と述べるに留めました。発言が審査に影響するので、とのこと。
女性が1人も残らなかったことについては「審査ではディスカッションができないので」と。「たまたま全員男性になってしまいました」。

以下は、ファイナリストそれぞれのコメントです。

務川:19歳で初めて弾いたプロコ3番を6年ぶりに本選で弾く。無我夢中だった青春時代の気持ちを思い出したいと思って選曲した。壮大な長めの大ホールでこの曲が弾けることが嬉しい。頑張ります。

安並:ブラームスの2番を本選で弾く。すべてのプログラムにブラームスを取り入れたが(3次のドホナーニはブラームスと縁が深い作曲家)、協奏曲は特に巨大な構成物。指揮者や他の楽器とともに音楽を創り上げたい。

牛田:浜松のために準備した曲がすべて演奏できて嬉しい。ラフマニノフの2番はP協奏曲で初めて取り組んだ曲。偉大な雰囲気の壮大な作品がここで演奏できることへの感謝を込めて臨みたい。

今田:この現状を受け入れるのにもう少し時間がかかりそう。チャイコフスキーの1番はコンチェルトの王という風格のある曲。作品の良さを皆さんと共有したい。

リー:ただ瞬間瞬間を楽しんでここまで来た。今はモスクワで勉強しているので、ラフマニノフ3番を選んだ。ベストを尽くしたい。

チャクムル:リストの協奏曲を5年ぶりに弾く。P協奏曲のコンセプトを完璧に表現した作品だと思う。この曲を演奏するのが楽しみだ。


おめでとうございます。
コンクールのファイナルで、6曲の異なる協奏曲が聴けるのは、確かに稀有なことかもしれませんね。

今日も朝からずっと予定が詰まっていて、どなたの演奏も聴けずにいるうちに結果発表となりました。
第3次への進出を決めた12名は次のとおり。
  1. ジャン・チャクムル (CAKMUR Can) トルコ 1997年生まれ
  2. アンドレイ・イリューシキン (ILIUSHKIN Andrei) ロシア 1995年生まれ
  3. 今田 篤 (IMADA Atsushi) 日本 1990年生まれ
  4. キム・ソンヒョン (Song Hyeon KIM) 韓国 2002年生まれ
  5. ブライアン・ルー (LE Brian) アメリカ 1998年生まれ
  6. イ・ヒョク(Hyuk LEE) 韓国 2000年生まれ
  7. 務川 慧悟 (MUKAWA Keigo) 日本 1993年生まれ
  8. 梅田 智也 (UMEDA Tomoya) 日本 1991年生まれ
  9. 牛田 智大 (USHIDA Tomoharu) 日本1999年生まれ
  10. 安並 貴史 (YASUNAMI Takashi) 日本1992年生まれ
  11. ザン・シャオル― (Xiaolu ZANG) 中国1999年生まれ
  12. アンドレイ・ゼーニン (ZENIN Andrey) ロシア1995年生まれ

女性が全員消えてしまいました。
第1次予選でそのテクニックに舌を巻いた太田さんも。残念。
第2次は聴いていないのですが。。。

第2次の演奏で感銘を受けた務川くん、牛田くん、共に残ったのは嬉しいです。
第3次の演奏順と曲目


【第3次予選】2018年11月19日(月)・ 11月20日(火)
演奏時間は70分以内とし、
課題曲であるモーツァルトのピアノ四重奏曲(*)と各自のリサイタルで構成。
(*)モーツァルト
a. ピアノ四重奏曲第 1 番 ト短調 K.478
b. ピアノ四重奏曲第 2 番 変ホ長調 K.493
弦楽器奏者:ヴァイオリン 漆原 啓子 川久保賜紀、ヴィオラ 鈴木 康浩 松実 健太、チェロ 向山 佳絵子 長谷川 陽子
最終日 11月20日(火)に本選に進むファイナリスト6人が決定

【本選】2018年11月23日(金)~ 11月24日(土)
出場者6人
ピアノ協奏曲を東京交響楽団(指揮:高関健)と協演

本日は2か所掛け持ちの仕事日のため、LIVEでは全く聴けず。
21時過ぎに帰宅後、アーカイブでの昨日の演奏を一人だけ聴きました。

79 牛田 智大 1999年生まれ 日本 →第二次演奏動画

佐々木 冬彦 SACRIFICE
F. ショパン バラード 第1番 ト短調 Op.23
S. ラフマニノフ ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36 (1931)

2018-11-16

いやはや、舌を巻きました。
どの曲も、冒頭の一音で、ズキュンとハートを持っていかれます。
スケール感が半端ないです。
なんかこう、壮大なる建築物が地中から建ちあがっていくさまを見せつけるような現代曲。
その最後の音から、バラード冒頭の悲痛な一音に至るまでの空白の時間にまでも惹きつけられました。
ラフマニノフの厚み、深み、激情の魅力については言わずもがな。

公式レポートによると、
浜コンで演奏する曲はすべて中村紘子氏に捧げるものなのだとか。
コンサートとコンクールとの気分の差を問われた答え
「わりと別ものですね。コンクールのほうが、素でいられる気がします。」
にもぶっ飛びました。大緊張のあまり……というコンテスタントが多い中、「素でいられる」とは。

なるほど。大物です、牛田君。恐れ入りました。

昼休みの時間帯。iPhoneで、この方の演奏だけLIVE視聴できました。
なんたる幸運。

No.50  務川 慧悟  1993年生まれ 日本 →第二次予選動画

F. メンデルスゾーン

幻想曲 嬰ヘ短調 Op.28 「スコットランド・ソナタ」

C. ドビュッシー 前奏曲 第1集 より 「雪の上の足あと」

C. ドビュッシー 前奏曲 第1集 より 「さえぎられたセレナード」

佐々木 冬彦 SACRIFIC

A. スクリャービン ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53 


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見事なリサイタルでした。
深淵なる音楽に、透明感のある音色に、釘付けになりました。
この瞬間に立ち会えたことに感謝です。

プログラム構成、秀逸でした。
メロディックなソナタで格調高い場を創り上げ、
ドビュッシーの響きで、たゆたう色合いの雰囲気に変えていって、
現代曲、さらにスクリャービンの神秘の世界へ。
縦横無尽な音色の展開に引き込まれました。

実に密度の濃い、聴き入らせる音楽づくり。
今日は彼の演奏しか聴けませんでしたが、それで十分に満足です。

一次予選通過者が発表されました。紫表示は女性

  1. ジャン・チャクムル (CAKMUR Can) トルコ 1997年生まれ
  2. ドミトロー・チョニ (CHONI Dmytro) ウクライナ 1993年生まれ
  3. タチアナ・ドロホワ (DOROKHOVA Tatiana) ロシア 1991年生まれ
  4. アンドレイ・イリューシキン (ILIUSHKIN Andrei) ロシア 1995年生まれ
  5. 今田 篤 (IMADA Atsushi) 日本 1990年生まれ
  6. アリョーシャ・ユリニッチ (JURINIĆ Aljoša) クロアチア 1989年生まれ
  7. 兼重 稔宏 (KANESHIGE Toshihiro) 日本 1988年生まれ
  8. キム・ソンヒョン (Song Hyeon KIM) 韓国 2002年生まれ
  9. ブライアン・ルー (LE Brian) アメリカ 1998年生まれ
  10. イ・ヒョク(Hyuk LEE) 韓国 2000年生まれ
  11. リー・イン (Ying LI) 中国 1997年生まれ
  12. 務川 慧悟 (MUKAWA Keigo) 日本 1993年生まれ
  13. 太田 糸音 (OTA Shion) 日本 2000年生まれ
  14. 佐川 和冴 (SAGAWA Kazusa) 日本 1998年生まれ
  15. ポリーナ・サスコ (SASKO Polina) ウクライナ 1993年生まれ
  16. フィリップ・ショイヒャー (SCHEUCHER Philipp) オーストリア 1993年生まれ
  17. アレクセイ・シチェフ (SYCHEV Alexey) ロシア 1988年生まれ
  18. マルセル 田所 (TADOKORO Marcel) フランス 1993年生まれ
  19. 梅田 智也 (UMEDA Tomoya) 日本 1991年生まれ
  20. 牛田智大 (USHIDA Tomoharu) 日本1999年生まれ
  21. イワン・ヤルチェフスキー (YARCHEVSKIY Ivan) ロシア1996年生まれ
  22. 安並 貴史 (YASUNAMI Takashi) 日本1992年生まれ
  23. ザン・シャオル― (Xiaolu ZANG) 中国1999年生まれ
  24. アンドレイ・ゼーニン (ZENIN Andrey) ロシア1995年生まれ

国籍を見ると
日本8名、ロシア5名、ウクライナ・中国・韓国が各2名、
トルコ・クロアチア・アメリカ・オーストリア・フランスが各1名、計24名。

男性20名、女性4名。
おめでとうございます。

第2次予選は、11月15日~17日。→第2次予選の演奏順と曲目

【第2次予選】
古典派、ロマン派、近・現代作品より2つ以上の異なる時代区分から2作品以上を選択
日本人作曲家による新譜課題曲(佐々木 冬彦「SACRIFICE」)を含め、40分以内で演奏
最終日 11月17日(土)に第3次予選に進む12人を発表

旅行日程に被ってしまい、ほとんど聴けなかったのですが、
第一次の演奏から恣意的に10数名を聴いた中で(アーカイブに上がってる3日目まで。少なすぎるのを承知の上)、印象に残った3人を挙げておきます。
それぞれ、ご自分らしさをよく出していたな~と思いました。
やはり第一次は曲目がバラエティに富んでいて、聴いていて楽しいです。今日も仕事でほとんど聴けないのが残念無念。

1.ソン・ユル君(3日目の第1演奏者)韓国 2000年生まれ 
第一次演奏動画
  • J. P. ラモー 新クラヴサン組曲 より 「エンハーモニック」
  • J. P. ラモー 新クラヴサン組曲 より 「エジプトの女」
  • F. ショパン 練習曲 変イ長調 Op.10-10  
  • F. リスト メフィスト・ワルツ 第1番
2018-11-13 (5)
たまたま初めてライブ演奏にアクセスできたときに、メフィスト・ワルツを演奏中でした。
その美音と、音楽の推進力にびっくり。「試しに聴いてみよう」といった気分だったのに、思わず聴き入って、見入ってしまいました。
帰宅後、前半の曲目も聴いてみて、その美しい音色と自然な音楽の流れにますます魅力を覚えました。


2.太田 糸音さん(3日目の第2演奏者)日本 2000年生まれ 
第一次演奏動画
  • S. プロコフィエフ 4つの練習曲 Op.2
  • F. リスト ハンガリー狂詩曲 第6番 変ニ長調
2018-11-13 (1)
パキパキっと歯切れよく、超絶テクニックをさらりと駆使しまくり、実に男前な演奏。
いやはや、凄いな!と唸らされます。
こういう演奏も、ありだな、と思いました。決して乱暴にはならないのが見事。
お名前はよく聞いていたのですが、今回演奏を聴いて、なるほど!と納得した次第です。


3.吉見 友貴くん(3日目の第10番目)日本 2000年生まれ 
第一次演奏動画
  • J. S. バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 変ロ短調 BWV.867
  • F. ショパン 練習曲 イ短調 Op.10-2
  • M. ラヴェル ラ・ヴァルス
2018-11-13 (6)
去年の日本音コン覇者です。
端正さとロマンティシズムが魅力。その良さがよく出ていたと思います。
最初は無表情だったのが、ラ・ヴァルスでは軽やかで流麗な曲想とともに楽し気な表情へと変化していったのも印象的でした。


なんと3人とも2000年生まれですね。
そういう時代になったのだなあ~と、これまた感慨を覚えます。


【追記】11/13 19:30
第二次進出者が発表されていました。
残念なことに、ソン君も吉見君も通過ならず、です。
太田さんは通過。
ほんとにレベルの高いコンクールなのだと痛感。
まだまだ若いソン君、吉見君。その演奏がまた聴ける日を楽しみに待ちたいと思います。 

中日新聞に、浜コン関連の記事を発見。
「中村紘子先生に演奏ささげる 牛田さん決意」(2018年11月7日朝刊)

そういえば、
浜松アカデミーの創立20周年の記念コンサート、私は東京で聴いたのでしたが(→2016年2月8日)、
同シリーズの浜松ステージに立った牛田君が、
なんでも舞台上で倒れた……という情報をネットで見つけ、びっくりした記憶があります。
「悔いの残る演奏」となったその曲は、中村紘子氏の前での最後の演奏ともなってしまったとのこと。

記事から引用します。

今回の浜コンで、牛田さんは一次で「ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 Op.83」(プロコフィエフ)を、二次で「ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36」(ラフマニノフ)を弾く。どちらもあのコンサートで満足に奏でられなかった曲だ。

 「先生へささげるプログラムなんです。先生が育てたコンクールで、あのコンサートと同じホールでしっかりと演奏し、また成長していきたい」と力強く語った。

なるほど。
プロのピアニストとして盤石の地位を築いている人が、改めてコンクールに出場するというのは、ほとんど聞きません。
コンクール出場の目的の一つが「プロのピアニストとして活動するため」というのが普通です。
よほどの思いがあるのだろうな~と思っていたのですが、
その理由の一つを知って、なるほど、と納得した次第です。

決してこれだけではなく、いろんな思いがあっての出場なのでしょうけれども。


それにしても、
「中村紘子さん(左)と並ぶ、模擬コンクール1位に輝いた牛田智大さん(右)とラナ・ベアトリスさん=2012年2月13日、浜松市中区のアクトシティ浜松で」
というキャプションの写真、衝撃的ですね。
浜松ピアノアカデミーでの優勝報道記事の写真。
6年前の牛田くん、かわいい坊やです。
そして、ラナ・ベアトリスさん、今や堂々たるピアニストとして活躍中。
改めて、牛田君の凄さを実感させられます。

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