PIOピアノ雑記帳

ピアノ、クラシック音楽関連の話題を主とした雑記帳blogです。

カテゴリ:【TV番組】 > ピアノの森

CDを購入いたしました。CD2枚組です。
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演奏者紹介は…

CHARACTER   
一ノ瀬海 
KAI ICHINOSE

本作の主人公。森に捨てられたピアノをおもちゃ代わりにして育つ。阿字野との出会いをきっかけにその天才的ピアノの才能を開花させ、阿字野とともに世界を目指す。


以上。
一方、当然のことながら、
ヤツェク・カスプシク(指揮者)、
わるしゃわ国立フィルハーモニー管弦楽団
については、よくあるパターンの紹介文が付されています。

原典子さんという方が、この演奏者紹介のページにコメントを書かれていて、

今回のアニメ化にあたっては、キャラクターごとに、第一線で活躍する若手ピアニストが「吹き替え音声」ならぬ「吹き替えピアノ」で実際に演奏を行っているが、カイを担当するピアニストのみ非公表となっている。あんなにも軽やかに「小犬のワルツ」を弾くピアニストは一体誰なんだろう?大地をも揺さぶるフォルテシモの迫力、マズルカでの鋭敏なリズムの冴え、泉から湧き出るような繊細で優しい歌、人の心の奥底へと潜っていく深い精神性、それらすべてを兼ね備えてピアニストなんて、本当にいるのだろうか?アルバムに収録される音源を聴きながら、あれこれ推測を巡らせた。

とあります。
が、結論としては、

(中略)そんな推測はどこかへ吹き飛んでしまった。そこで鳴っているのは紛れもなくカイのピアノ。彼の人生と、その心に浮かぶさまざまな感情を映し出す「森のピアノ」だったのだから。それはまた、聴く者の心を映す鏡でもある。

とのこと。
ふむ。
こういうコンセプトでCDも発売されているのですから、
カイの担当ピアニストについて、公式に発表するつもりはないのかもしれませんね。
分かる人にだけ、ひっそりとわかれば、それでいいのさ……といったところ?
反田恭平くんだと思いますけれども。

「ピアニスト、一ノ瀬海」
このアナグラムが
「世界一のピアニスト」
になるとは、私、まったく気づいていませんでした。

そして、そのとおりの審査結果に。
第1シリーズ、第一次予選の際に詳しく描かれた取材陣の動きが、公正な審査を促したのですね。
まさに「ペンは剣よりも強し」。

また、第15週(→)で気になった
カイの「4週間前の突き指」という話題……実はウソだったのですね。
カイではなく、阿字野の指、がテーマだったのでした。

そう。
この物語、実はカイの成長物語であるとともに、
阿字野が生きる力を取り戻していく物語でもあったのです。

阿字野がカイの前で初めて弾いた「茶色の小瓶」が、ショパコン優勝者ガラ・コンサートのアンコール曲として演奏されるなんて。。。
阿字野、カイが共演するリサイタルを開催するなんて。。。
ラフマニノフの2台ピアノ「組曲」、聴きながらうるうる。。。
この物語の構成力の見事さに脱帽いたしました。
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そして、やはり、カイの演奏者名は伏せられたままでした。
でも、
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この、実写めいた手が、阿字野の手、つまり、反田君の手ということでしょうか。
2台ピアノのプリモ担当ですね。
ステージ側から客席側を見る角度になります。

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とすると、この角度を変えたカットは、
2台ピアノのセコンド担当、つまり、カイの手、ということになるでしょうか?
これは、どう見ても
阿字野と同一人物の手、ですよねえ。
とはいえ、
阿字野の手を角度を変えて映したのだ、と言われてしまえば、それまでなのですけれども。

カイ役のピアニスト、発表されないままになるのかなあ。
ここまでヒント出したんだから、あとはご自由に~ってなこと??



【追記】
ツイッターに次のようなやりとり発見。
🎹TVアニメ  ピアノの森
最終話の第24話で描かれた阿字野壮介と一ノ瀬海の演奏シーンは、原作の舞台と同じサントリーホールで、阿字野役のピアニスト・反田恭平さんにこのシーンのためだけに弾いていただいた映像を使用して制作されました!

反田さん、ご協力ありがとうございました!」

🎹反田くん
「 
耳にイヤホン付けているの、分かりますか?🤔 一ノ瀬海の音源を聴きながらレコーディング等もしたのですが、これがまた難しいのです(アイコンタクトが取れないので)!!

サントリーホールさん、御協力ありがとうございました!!」

つまり、
収録時も相手はいなかった、ってこと。
どうやっても合わせられない相手、と言えば、
「自分自身の音源」
でしょうね。 やはり。

上記ツイートへの書き込みの中には
奈良で「ピアノの森」オープニングの画・音に合わせての生演奏も、かなり難しかった😄💦と仰っていた」
という発言も。
なるほどー。
オープニングの演奏も反田くんによるものとご本人が公言されたんですね。
これで、謎解き終了、でしょうか。 

#23は、ファイナルの協奏曲第1番の演奏をたっぷりと。
カイの第3楽章
そして
レフの全楽章

これまで多くの人々に支えられてきたことに思いを至らせるカイ。
感謝の思いを込め、喜びと推進力に満ちた音楽でした。
若々しい躍動感が輝くよう。
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対するレフ。
姉エミリアとの対話で演奏するうちに、一時音楽が乱れた、との説明が流れましたが、私の耳には乱れは感じられませんでした。
同国人レフを全力で支えるという意気に満ちた指揮者とオーケストラという設定、さもありなん、と思います。
シモン・ネーリングくんの演奏は、歌い上げるルバートがとても魅力的。
テンポが大きく揺れても、オケがピッタリ寄り添っている様子が伝わりました。

同じ曲でも、演奏者によって随分と異なるものです。
それぞれの素晴らしさが堪能できました。
ありがとう、NHK!

エミリアの事故の真相も明らかに。
電車の事故だったのですね。
レフ自らの行動による怪我ではないとわかって、ちょっと救われた気分になりました。
彼と父親との人間関係も、好転しそうな気配。

パンウェイ、カイ、レフ。
皆、この舞台で「最高の演奏」ができたとは。
あ、第二次予選の修平もそうでしたね。
なんだか胸が熱くなりました。
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カイの演奏者は、やはり秘されていました。 

TVアニメ『ピアノの森』ポーランド・ワルシャワのレコーディング映像【期間限定】

ソフィ・オルメッソンさん、牛牛くん、シモン・ネーリングくんが、当然ながらお顔を出して演奏する中、1名のみの映像が手だけ。。。(→
こちら

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一ノ瀬海役のピアニストが、ワルシャワ・フィルと収録したときの動画だといいます。
この手は……どう見ても反田恭平くんではないでしょうか??

今回は
「カイのこれまでを振り返り、世界への飛躍に向け、第一歩を踏み出すカイを描く」
そういう回だったと思います。
キーワードは
  • 約束
  • 新しい自分への脱皮
約束を果たすんだ!
信頼関係で結ばれた心が、相手に応えようとする信念が、すべての努力の動機付け、壁を乗り越える力となる。
その総決算が、ショパンコンクールのファイナルステージとなったのですね。

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冒頭、レフが、彼自身の悩みと葛藤をカイに伝えます。
事故で5年も意識のない姉・エミリアは、レフがこのコンクールで勝利すれば意識を取り戻すと約束した(姉は自分だけには話ができる、と語るレフ)……それが大きなプレッシャーになっている様子。

カイの反応
「俺たちに約束できるのは、ただベストを尽くすことだけ。」
「俺のピアノを、エミリアにも……エミリアだけじゃない、世界中の人に届ける。」

カイのこの言葉は、阿字野に師事しはじめた当初言われた
約束してほしい。カイにしか出せない音を必ず世界中に届けると。」
から出たものでした。

レフの次の反応には、カイとともに視聴者もびっくりだったでしょう。
「いいなあ、カイは。何の苦労もない坊ちゃんで。素直にまっすぐ育ってて。あこがれるよ。」

出自を理由に、幾多の辛酸をなめてきたカイ。
でも今や「坊ちゃん」に見えるような青年となっていたのですね。
環境は人を育てる。
「ピアノの音が出なければ、ピアノを交換すればいい。」と、レフのプレッシャーを軽減させるカイ。

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いよいよカイのファイナル。
会場には、小学生のころコンクールで出会ったタカコ(「便所姫」)の姿も。
彼女が、ネット中継で聴いた修平の第2次予選に
「あれは特別なピアノよね。音楽家の人生を変えるほどの。」
と告げます。さすが、わかる人には、わかるのです。

そして、はっとする場面へ。
ステージ直前、阿字野の手を求めてきたカイに、
不安なときはいつも彼に触れたがった幼いカイの姿を重ねた阿字野ですが、
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カイの意図は「森のピアノ」のかけらを阿字野に渡すことだったのです。

「これは先生が持ってて。」
「これからは阿字野壮介を支えるように、言い聞かせておいたから。」
「俺はもう大丈夫。そいつと、客席で見てて。俺、弾いてくる。」

「カイが私から巣立っていく。行け、カイ。未来をつかむために。」

いよいよオケの演奏が始まります。
ピアノが入るまでに長い時間がかかるピアノ協奏曲第1番。
その音楽に合わせて、さまざまな人々……カイを支え、応援する人々の姿が。
客席の修平、タカコ、阿字野、、、。
ワルシャワのバーの人々、日本のレイちゃん、森の端の人々、、

ピアノの音色に、阿字野の独白が重なります。
「レイコさん、今、カイは世界に向けて自分のピアノを弾いています。」

そして……なんと、会場全体が
停電。

真っ暗な中で、自分のピアノをまったくぶれずに弾き続け、オーケストラも、観客の動揺も落ち着かせてしまうカイ。
一気に観客の耳を作品世界に集中させるカイ。
パンウェイの独白
「奴は、突然の闇を最大の演出に変えたんだ。」
指揮者とオーケストラ
「我々はどこまでもついていく。」

甘美な第2楽章。
闇の中で、たっぷりととった休符の効果……やはりこの番組のために新たに収録された演奏でしょうか。

阿字野の心に、カイへの感謝が沸き上がります。
死んだように生きていた自分が、カイのおかげで感情を取り戻した。
カイが成長する喜びが、私にとってかけがえのないものになっていった。

日本では、画面を見つめて涙するレイコの姿が。
カイの言葉がオーバーラップします。
「本当に阿字野を喜ばせることがあるとしたら、一つだけ。」
「阿字野は必死だった。俺を一人前のピアニストにするために生きていた。」

ピアノの音色に重ねて、苦労のシーンが次々と。
「俺は阿字野に土下座をさせてまで、学校になんか行きたくない。」
諭す阿字野。
「だったら、人の何倍も努力して、きっちり卒業しろ。」
「私を動かしているのは、正真正銘、お前の力だ。」
「お前は森のピアノに選ばれた奴なんだぞ。自分を信じろ。自分を信じることができないなら、私を信じろ。」

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ピアノの森にいる気持ちで、自分を信じて弾くカイ。
いよいよ第三楽章になると、演奏に変化が訪れます。

阿字野
「今こそ、その森を出るんだ。」
「もう今は、森に戻らなくてもお前のピアノが弾けるはずだ。」

カイの心も阿字野と意識と連動しているかのようです。
  • 森で育ったカイ vs  平地で育ったショパン
この対比に気づいていたカイは、
ショパンの育ったポーランドの、どこまでもどこまでも続く平地を思い、
ショパンの見ていた、大きな大きな空を思って弾くうちに、

「森から、抜けた!」という境地に。

阿字野の独白
「これが、これこそが、私の聴きたかったカイのピアノ。」
「そうか、私の求めていたのはこういう音だったのか。」
「のびやかに、のびやかに、世界中の天空を駆けめぐる。」


最後は、カイの心の叫び。
「ああ、音楽は、こんなにも、自由だ!」
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BGMとして流れる協奏曲の美しかったこと。
その音を邪魔せずに流れる映像、けっして多くはないセリフも効果的でした。
今回もモーションキャプチャーなしの紙芝居的アニメーションでしたが、音楽を引き立たせるには、これでよかったと思います。

あらすじ以外で印象に残ったこと。

(1)レフとカイの交わした別れ際のあいさつの響き
「ポーボーゼーニャ」
ぐぐってみたら、ポーランド語「powodzenia」。
幸運を祈る。……私も使っちゃおうかな~。

(2)コンクール冊子記載のカイのプロフィール
「阿字野壮介と森のピアノに師事」ですって。
森のピアノは、ピアノ教室か何かの名前だと思った…というマエストロ。
でも、実際に「森のピアノ」がカイの演奏を成長させたということは、阿字野にとって自明のこと。
・ピアノの音を、部屋を通り抜ける風に乗せる
・森の蛇をおとなしくさせる方法を使って、柔らかい音を出す
こんなことが自然にできてしまうカイなのでした。
それを「森のピアノに師事」と表現するなんて、かっこいいなあ~。

今回の感想。
阿字野壮介、素晴らしい!」

優勝を確実にする手立てとして、養父危篤を理由に帰国させられていたパンウェイは、
不在の間に、その出自と、阿字野壮介の模倣を暴露されたのでした。

「パンウエイはしょせん、下品な男に拾われた汚い貧乏孤児。しかもよりによって聞いたこともないピアニストのマネが基本になっているなんて、手がつけられない」

というレフ・シマノフスキの弁は、一般の考えを代弁するものでしょう。

ファイナルの曲目を協奏曲第2番から第1番に変更し、
「優勝を狙ってきた!」
と噂されるパン自身の、心の声は、
「今となってはだれにどう思われようといい」というもの。
ただ、一点
「ただ阿字野壮介先生のことだけ」を気にかけている彼です。

かつての彼にとって「地獄に下りてきた一本の蜘蛛の糸」であった阿字野のピアノ。
その阿字野が、パンの記事を読んで「いまいましく」感じていたりしないかと危惧するのです。
俺は「阿字野の唯一の後継者だ」というパンの自負が、拒否されはしないかと。
パンのアイデンティティに関わる重大問題ともいえるでしょう。
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ステージに向かう階段で阿字野とすれ違ったパンは、阿字野を呼び止めて語り掛けます。

「僕のピアノは先生を不愉快にはしませんでしたか」
「僕のピアノは先生のピアノをもとにしています」
「先生のピアノに出会わなければ、僕は生きてはいなかった」
「この先も、このまま僕がピアノを弾くことを許可してくれますか」
「先生のピアノを継承していくこと」の許可を!

ある演奏家を手本として演奏を続けてきた者なら、
こういった発想に至るのは自然でしょう。
ところが、こういった発想を軽々と超える阿字野の言葉に、唸らされました。

「君が私のピアノに惹かれたのは、もともと生まれながらにして君の求める音と、私の求める音が共通していたのかもしれない。だから君の魂が私のピアノに強く反応したとは考えられないか」
「私は残念ながらそれを追求する道を途中で挫折してしまったが、君はその先に行けるんだよ。それでも私の許可が必要かい?」

「パンウエイ君、私は君のこの先が見たい。私の求めていた音は、この先どう成長するか見てみたい。だから、もう何も恐れないで、思うがままに、存分に」

師匠と弟子とか、継承とか、
そういう発想が、小さく狭いものに見えてきます。

「君の最高の1番」「ピアニスト、パン・ウエイのベストのピアノ」
をリクエストした阿字野です。
一ノ瀬海を叩きのめすことになったとしても?という問いに対しても
「構わないよ。徹底的にやってくれ」
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阿字野に受け入れられたパンの独白。
差し出されたその手は、大きく、温かく、俺を丸ごと包み込む。
俺はもう何も恐れない。俺の唯一の先生が、そう言ったから。
足が軽い 体じゅうに力があふれている 目に入るものすべてが輝いている。

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そうしてステージに向かったパンの演奏は変貌を遂げ、会場じゅうを驚かせます。

こんな感じは初めてだ。俺は今、すべてに感謝している。
ピアノは支配するものだと思っていたのに、支配から解き放てば、ピアノは勝手に歌ってくれるのか。
俺の中にはこれほどの愛があったというのか。
先生、おれは魔法をかけられたのか。

笑顔で演奏するパン、あたたかい音を出すようになったパンに、
多くの人々がパンの優勝を確信します。

今日から俺は、ピアノを弾くことで生きていける。
母にも感謝できる。
母さん、俺に生を授けてくれて、ありがとう。

しかし、「あと二人残っている」と述べる審査員も。
残る二人は、カイ、そして最後に、レフ・シマノフスキ。
(レフの体調不良という言い訳から、パンの演奏順位が繰り上がり、レフが最後になったのでした)

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この日の朝。
カイとレフは、ショパンの森で出会い、言葉を交わしていました。

「ショパンは果てしなく広い平原で育った。もっと大きく、果てしなく大きい森で」
この発想に大きなヒントを得て、
森のピアノのかけらを手に、ショパンの森の大木と対峙したカイ。
その木の上には、レフがいたのでした。

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パンの演奏終了後、控室に戻ったカイは、森のピアノのかけらを手に思いにふけります。
朝、レフが「死んだ」と述べた(その後訂正)、レフの姉エミリア。
その彼女が実は
「事故に遭ってもう5年も意識が戻らない」状態で、
「本当ならこのコンクールだってエミリアが出ているはず」
という話を聞いたカイは思うのです。

俺だけじゃないんだ。みんな、大なり小なり何かを抱えているんだ。

パンしかり、レフしかり。
最後のシーンは、この部屋に入ってきて、カイと向き合うレフの姿でした。
これから二人の間に何が起こるのか。。。


さて、残る放送はあと3回。
カイのファイナル、
レフのファイナル、
そして発表、でしょうか?


そうそう、
パンの優勝を確実にするために暗殺されようとしている彼の義父は、今後、ストーリーの展開にどう絡んでくるのでしょうか。
子どものいるファイナリスト、アレグラ・グラナドスが、パンの母親をかばうなどの描き方にも感心した今回でした。

こんなCDが出ていたのですね。
「ピアノの森」一ノ瀬 海 至高の世界
3月20日発売です。

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他にも、
「ピアノの森」雨宮修平の軌跡:3月13日発売
「ピアノの森」パン・ウェイ 不滅の魂:3月27日発売
「ピアノの森」Piano Best Collection II:4月17日発売
とのことです。→情報サイト

「一ノ瀬海」の演奏として、演奏担当者名を伏せたままCD化してしまうとは。
びっくりです。

もしかすると、曲目によって演奏者が違う、ということもあるでしょうか??
少なくとも、子ども時代の演奏は、選抜された子どもたちが担当していたはずで、
「演奏者はただ一人」
ということは、ないように思います。
カイの担当演奏者が、番組のために新たに録音したことが間違いないのは、
モーションキャプチャーをつけて、放映前の宣伝からさかんに流された
  • エチュードOp.10-1
番組のために制作された新曲で、上記エチュードの編曲版でもある
  • オーケストラと一緒に演奏されているオープニングテーマ曲
さらに、今後の放映で流されるはずで、4月発売予定のCD宣伝文でも
「実際のショパン・コンクールでも演奏している、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団との共演で、コンクールの舞台であるフィルハーモニー・ホール(ワルシャワ/ポーランド)で録音されました。」
と名言されている
  • ピアノ協奏曲第1番
この3曲でしょう。
今の時点では、この3曲については反田くんの演奏(阿字野壮介との一人二役)の可能性が高いかなあ……と感じています。

カイの演奏すべてを担当者一人が(今の仮定でいえば反田くんが)担当したのかどうか。。。もちろん、その可能性もありますが、
「紙芝居的静止画アニメ」とともに流れた曲については、すでにある録音を使用したという可能性も?
4月発売予定CD宣伝文に
「初CD化となる音源も多数収録しています。」
とある以上、すでにCD化されている音源も入っている、ということになりますよね。
それこそ、チョソンジン、ブレハッチ、等々の名演奏を使ったということも考えられそう。
著作権の問題がクリアできるか(名無しでの発売は認められないかも…)という問題は残りますけれども。

CD情報を知ってのつぶやきでございました。



蛇足ですが、
昨日、牛田くんのショパンを生演奏で聴いて、カイの演奏とは方向性が異なると感じました。
もちろん、「演技」で異なる演奏をするという可能性もありますが、そこまでして牛田君とアニメを結びつける必要はないかなあ。

今回は、カイのファイナル演奏に向け、
その前提条件として必要な情報を伝えておくことを目的とする回でしょうか。

(1)コンテスタントについてのゴシップ情報

「パン・ウェイの真実」という速報を伝える冊子が、会場で配布されます。
そこには、パンの出自、養父のことがスキャンダラスに綴られているのです。
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会場のあちこちに置かれ、聴衆が手にとっていく冊子。
修平、カイも手にします。
そして、この冊子を目にしたセローは阿字野を呼び出し、行動を起こすと宣言。
その結果、この冊子を出版していたゴシップ誌の記者二人は
「コンクール運営を妨害した容疑」で逮捕されるのです。
逮捕されたこの二人、そのとき追っていたのは
「一ノ瀬海のゴシップ」。
そして、森の端という存在にもたどりつき、確証は得られないまま、その情報を使った「でっちあげ記事」をまさに出そうとしていたのでした。
これは、今後の展開に影響するのでしょうか??

(2)指導者とコンクール

修平の父は、修平がコンクールで「勝つ」ことを目標とし、自身のリサイタルも制限してその援助に取り組んできました。
「カイに勝つ」ことの重要性を息子に吹き込み続けた罪に気付いたのは、つい最近のこと。
彼自身が、阿字野をライバルと意識し続け、彼に「勝てない」ことに縛られ続けてきたのです。
「修平 vs カイ」は、「阿字野 vs 自身」の代理戦争だったのか、という独白もありました。
そんな彼、
なんと、阿字野とは直接に対面したこと、会話を交わしたことさえなかったのですね。
今回、セローの仲介で、彼は初めて阿字野に向き合い、がっちりと握手します。
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そして、阿字野のぶれない目標を知ります。

「一ノ瀬カイを世界に売り込む」こと。
「ピアノで食べていけるようにしてくれ」というのが彼との契約だから。

その意味で、決勝に残り、もう一度演奏の機会が持てたのはよかった、と。
これはけっして、謙虚という話ではない、と。

私、個人的には、
最近の若者は、修平父より阿字野的な意識でコンクールに臨んでいる人が多いように感じます。
ある意味、阿字野とカイは、時代を先取りする意識でコンクールに臨んでいたともいえるかも?

(3)カイがコンクールに臨む意識

冒頭、修平との合わせ練習で朝を迎えたカイは、
「優勝したい」
という気持ちを彼に伝えます。
その理由は、修平だけに伝えられ、我々視聴者には伏せられているという状況。
その意味の重さに茫然とする修平です。
予測してみるに、
上の(1)(2)を総合した「森の端の人々を救うために、どうしてもピアノで稼ぐ必要がある」といったところでしょうか?
第1シリーズにあった、阿字野の指導を受けると決意した場面が思い出されます。


そして、ポーランドで留学生活を送っている修平が、
「ポーランドはどこまでも平地。ポーランドとは”平地の人々”という意味」
という話をすると、カイは目を輝かせて、
この情報が彼のファイナルの演奏に大きなヒントを与えてくれたと感謝するのです。
「ショパンは、壮大な平地で、雄大な空を見上げて育ったんだね」と。


さて、最終日にはパン・ウェイも演奏すると判明。
いよいよパン、カイの協奏曲が聴けるのでしょうか。

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17歳という若さでは優勝は無理だ!と断じる意見(by修平父)、
23歳で子どももいる既婚者女性のコンテスタントの描き方(夫が赤ん坊を抱えて会場の外で応援)も印象に残りました。


視聴を終えて、秀逸なタイトルだなあ、と思いました。
「君の”1番”のために」
この「1番」とは
  • カイの最高の演奏
  • ショパンのピアノ協奏曲第1番
の2つの意味を持たせた掛詞(かけことば)でしょう。
ショパンのピアノ協奏曲のうち、カイがファイナルで演奏するピアノ協奏曲は1番。
2曲のうち
「派手な演奏効果を持つ1番を選ぶコンテスタントが圧倒的に多い」こと、
「今回2番を選択しているのは12名中3名。中国のパンウェイ、ウクライナのオレーシャ・ユーシェンコ、日本のムカイサトル」であるとの解説が入りました(聴衆の独白として)。

そういえば、協奏曲第2番を選ぶと優勝できないというジンクスを聞いた覚えが。。。確かめてみたら、第2番での優勝者は「第1回のヤコフ・ザーク(第2、第3楽章)と1980年のダン・タイ・ソンだけ」だそうです。

さて、今回のストーリーの肝は、カイに近しい人たちの、カイへの思いです。
前回、ファイナルに進めなかったことに関して、その心のどろどろをカイにぶつけてしまったことについて、すっかりふっきれた雨宮修平。
いま、彼には「やり残したこと」が、ただ一つ。

「カイ君がベストな状態でファイナルのステージに立つために、僕はどうすればいいのか」
「僕は君の一番大事なときに君を傷つけた」

そうです。
カイは傷ついていました。修平の「僕は君が嫌いだった」という言葉に。
カイの独白。
「子どものころから人に嫌われることには慣れていた」
「いろいろあったけど、雨宮は俺のはじめての同志だった。そばにいなくても、今ごろ雨宮もピアノと格闘していると思うと力になった」
カイと修平の心の向かうところは同じだと思っていたからこそ頑張れた、
と、修平の存在に頼ってきた自分に気づくカイなのでした。

ソフィー・オルメッソンのファイナルステージを見て、練習すると会場を後にしたカイですが、当然ながら練習に集中できません。
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カイの異変に気付いていた阿字野とジャン=ジャック・セロー。
練習室に現れた阿字野の「最後のレッスン」での言葉が、また深かった。

私から教わったことはすっかり忘れなさい
忘れるのも大きな才能の一つ
今お前に必要なものはすべて、お前の血肉になっているんだよ
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ここでカイに手渡したのが、日本を発つときにカイの母・レイコさんに手渡された、カイへのお守り代わりです。ああ、こういう場面で!とハッとしました。

カイ「俺の、森のピアノのかけら」

そいつがなくても、お前の中には、森のピアノがあるだろう?
お前のものにしたものは、失くしようがない。
私の教えたことは、お前が全部、自分のものにしてきたはずだ。
だから安心して、すべて忘れろ。頭の中を真っ白にして、ファイナルに挑むんだ。
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協奏曲は大勢の職人たちとの共同作業になる。
その場で全神経を研ぎ澄ませて、オケの音と、呼吸、そして観客、それらとどうコミュニケーションをとれるか、それが勝負になるだろう。
99%はもう学習してきた。残りの1%、残りの無限大はステージで直感で弾け。
大丈夫。自信を持て。
お前はもう、一ノ瀬開というオリジナルなんだよ。

ううむ。プロの助言です。深い。
そして、阿字野が去った後のカイの対応にも唸らされました。

泣くだけ泣いたら落ち着いた。
人生はいろんなことがある。
とりあえず、頭の中をリセットしてみよう。
身についているなら、できる。
ただただ、集中するのみ。
そうすれば、
頭が空っぽになって、森に行ける。
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こういう境地に達するまでのカイの努力に、その道のりに頭が下がります。
そして、
この後の展開に、涙が出ました。
気を取り直して練習を始めたカイの独奏パートに寄り添う、オーケストラパートのピアノ。
不自由な左手を抱える阿字野には果たせなかった、生演奏のピアノによる伴奏。

どこからか、オケのパートのピアノが聞こえる。
幻想?
となりから?
ついてくる。
なんて、なんて、気持ちのいい。
ああ、この音は。

弾いていたのは、もちろん、
カイの居場所を予測して隣室に来ていながら、どう行動していいかわからずにいた修平。

遅くなってごめん、手伝いに来た。

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ステージに場を移して練習する二人。
それを見守る阿字野とセロー。
いい場面です。

さて、それに対して、大変な渦中に投げ込まれたのが、パンウェイです。
突如現れた男たちに、中国への帰国を迫られた後、
ファイナルの出番を初日から最終日に移動したからと
特別な練習室に案内され、3日間ここで思う存分練習するよう指示されたパンウェイ。
案の定、けがを負った義父の差し金でした。
「初日と最終日では審査員の印象が全く違う。あいつのことだ、汚い手は使わないだろうから」
と、「父危篤」という情報で事務局を動かした義父。

こんな情報を聴くと、第一演奏者で優勝した前回大会のチョ・ソンジンの偉大さが際立ちますね。


それはさておき、
カイが、阿字野、セロー、修平、母のレイちゃんと、理解者に囲まれているのに対し、
パンウェイの置かれた環境は、なんとギスギスと苛烈なことか。


「ロンティボーのときより格段に進歩している」というパンウェイの感想を引き出した(特別練習室は会場の様子を映し出すモニターつきなのです)第一演奏者・ソフィーは、
「20歳のショパンは希望や勇気を胸に、祖国を旅だった。その行き先は私の国、フランス、パリ。この曲は私にこそふさわしい」
という自負を持って演奏。
今後のコンテスタントの思いがどう描写されていくのか、期待されます。


さて、今回のステージ演奏はソフィーだけだなあ、と思っていたら、仰天。
番組最後に現れたのは、こんなクレジットでした。
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2台ピアノ版コンチェルト第1番の演奏者として表示されたのは
  • 高木竜馬(雨宮修平)
  • 反田恭平(阿字野壮介)
という文字。
確かに、阿字野の演奏もチラリと出ましたねえ。オケパートの練習音源、ということで。
ああ、そうか、「(2台ピアノ)」と表示されるのは、オケパートなのですね。
ピアノパートは、オケと合わせようが、ピアノと合わせようが、内容に変化はないわけで。
とすると、演奏者名が空白になっているところが、カイの演奏担当者になるわけですね。
一瞬、
「反田君がカイの演奏担当と明かされたか?」
と思いましたが、そうではなかったのでした。💦

ららら♪クラシック
2019年3月8日(金)放映

ピアノの森でピアニストの演奏吹き替えを担当した3人がスタジオに集合。
ううむ。
アニメについて語られた内容は、ほぼ第1シリーズ放映前の特別番組で明かされていたことでした。
反田くんの「小犬のワルツ」弾き分けも、
実際の演奏を先に収録し、それに合わせてアニメの動きを作っている、ということも。
あ、一点、
オーケストラとの演奏も、実際のポーランドの会場で、ワルシャワのオーケストラに演奏してもらった、というのは新しい情報だったかもしれません。
これについては、すでに
ソフィの演奏担当者、ジュリエットさんがFacebookで「ファイナルステージの演奏はワルシャワで」「世界的レベルの3人のピアニストと」収録したことを発信した
という指摘を、拙ブログ過去の記事へのコメントとしていただいてました。それが裏付けされた形です。

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おもしろかったのは、インタビューに答えた3人3様の意見。

≪コンクールに臨む気持ち≫

反田:通過点に過ぎない。1回でも多くそのステージで弾いて、世界に人々に注目してもらいという気持ちの方が強い
高木:1位がとれれば大きなチャンスだが、結果がでなくても成長の場になる。自分も他のコンテスタントも極限まで自分を追い込んでその場に乗り込んでいるので、同じ境遇の仲間だという意識になる。
牛牛:コンクールに参加したことはないが、コンサートの時は他者の存在を意識している。聴衆の一人一人が審査員だという気持ちで臨んでいる。


≪ピアノを1日どのぐらい弾くのか、ステージでのプレッシャー≫

反田:レコーディングのときが一番弾く。短期集中型。緊張やプレッシャーはあまり感じない。ステージに一歩出たら後は大丈夫という感じ。
高木:コンサート前、コンクール前はできるだけ弾いていたい。1日14~15時間弾く。ステージというのは特別な場。ステージに上がって演奏するときにルーズになりすぎるほうが怖い。
牛牛:ステージでの緊張はいいこと。聴衆は自宅に来てくれたお客さんだと捉えている。ステージで気負う必要はない。完璧を目指すのではなく、直観と指、神と聴衆にすべてを委ねるだけ。


≪同世代のピアニストへのライバル心≫

高木:同年代のピアニスト十数人のスケジュールと曲目が頭の中に入っている。この曲、やってるんだ、どういう風に弾くんだろうと思って妄想が広がる。
反田:いつもコンサート前になると、高木君から「がんばれ」というメッセージが届くのは、そういうことだったのか!
  • 個性と風格の反田君、
  • まっすぐで努力家の高木君、
  • 理性と知性の牛牛君、
といったところでしょうか。
個性がそれぞれに出ていておもしろかったです。

今回の主役は、ファイナルに進めなかった雨宮修平。
その心の葛藤です。
ステージ演奏のシーンは全く出てきませんでした。

心に痛かったのは、修平とカイのすれ違い。
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修平の独白。
「昨日から僕の心を支配しているのは悲しみではなく怒りだ」
「あのときの笑顔。あれはのんきなカイ君のことだから、結果を知らなかったんだろうね。それより、その後の顔。察しのいい気味のことだから、すべてに気づいたんだろうけど、あのなんとも言えない困ったような顔」
「同情されるより、ののしられたほうが何倍もましだ」
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修平が、カイに向かって投げつけた言葉。
「カイ君、君は本当にいいやつなんだろうけど、僕は君のいない世界に行きたい」
「僕は、カイ君が嫌いだ」
「僕はカイ君に出会わなければよかったんだ。カイ君を嫉妬する小さい自分が嫌いになる」
「僕はカイ君に勝つことばかり考えてきたけれど、カイ君はそもそも僕をライバルとも見ていなかった」
「同情するのだけはやめてくれないか」
でも、結局は
「カイ君に投げつけたナイフ、すべて自分に返ってきたように心が痛い」
と感じる修平。

この回のタイトル「レクイエム」とは、ショパンの命日に
聖十字架教会で演奏される、モーツァルトのレクイエムを指すのでした。
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修平の父は激しく悔います。
「私は修平に、私と阿字野壮介との代理戦争を強いていた」
「ああ、私は何という間違いを、修平に」
「勝った、負けたという前に、音楽をする喜びというものが、根底にあることを忘れていた」
「私は修平に苦しみだけを与えていたのではないか」

マスコミのインタビューをすっぽかし、行方をくらませていた修平ですが、彼も密かにこの場に足を運んでいます。
「この中にいると自分の中のどろどろしたものが浄化されて、恨みも、怒りも、嫉妬も、なくなっていく気がする」

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修平は、パンウェイの朝の散歩の友でもある犬に寄り添い、語り掛けつつ夜を明かしていました。
そして、それによってふっきれていました。
「パンさん、ぼく、結果は受け入れてます。自分の中で一番のピアノは弾けましたし、ここからが僕のスタートです。」
「パンさんは、どうしていつもそんなに自信満々でいられるんですか」
「自信満々?おれはいつも、がけっぷちに立っているだけだ」

そしてこの日、これから、パンウェイがファイナルで演奏するのです。

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正直に言って、
レクイエム?え?思いつめた修平がもしかして……
なんて恐れたりもしたので、この展開に、ふっきれた修平の姿にほっとしました。

修平をポーランドで指導してきたパブラス先生が修平にかけた言葉
「でも君は、ピアニストとしてのスタートを切ったんだよ。すばらしい演奏だったんだから」
「今後のこともあるし、あとでゆっくり話そう」

また、修平の父の友人である審査員の言葉
彼はもうピアニスト。だから、大丈夫」
「覚醒した演奏ができた。あの快感を得たものは、弾かずにはいられなくなる

は、修平を祝福するものですよね。


さて、一方、
修平に投げつけられた言葉で傷ついたカイのほうは、どうなのでしょうか?
これからのファイナルの演奏に影響はないのでしょうか?
今回、阿字野とセローには
「何かあったな」
と見抜かれていたカイですけれども。

今後の展開が気になります。

「驚いた。日本に住んでいる若者が、ここまでポーランドの心を理解しているとは」
審査員の独白からスタート。
カイの演奏は、まだ続いていたのですね。
今回はただ一曲
  • ピアノ・ソナタ第3番
に絞っての放映。びっくりしました。
そして、その密度の濃さに圧倒されました。

第1楽章
カイのステージでの演奏に、阿字野壮介の指導の回想が重なります。場所は海。
「エネルギーを外に出さずに、一つ一つ内なるエネルギーに変えていくんだ」
という指示に
「どうしてもこの提示部で体が熱くなる」
と戸惑う少年カイは、海の中で「エネルギーを内なるエネルギーに変える」方法を学びます。
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海の生物をつい追いかけてしまうように、音符の熱さに反応していた自然児カイ。
カイの演奏、その成長は、海や森といった自然と感応する力と連動していたのですね。

第3楽章
回想はカイの未来を見つめる阿字野の姿へ。
「この海の向こうには広い世界が待っている」
「おまえは必要なものはすべて持っている。カイにしか弾けない音を必ず世界に届けると約束してほしい」
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実際のステージ。
カイの演奏のピアニッシモはまるで聞こえないよう。いや、遠くのワルシャワの森から届くよう。
奇跡の音。
「これこそが、カイだけが出せる音なんだ」
「打ち捨てたピアノに命を与えた、あのカイだけだ出せる音」

カイ自身の独白
「世界中に響かせることができているだろうか」
ジャンジャック・セロー
「壮介。これが壮介のやりたかったことなんだね」
阿字野壮介
「あの会場でカイのピアノを響かせることができれば。世界中でただ一人、カイにしか出せない音を響かせること。カイを森の端からはばたかせたい。点数や順位など二の次」


第4楽章
この輝かしさ。なんという推進力。
奇跡のピアニッシモの後の、素晴らしい切り替え。

演奏、見事でした。
「カイにしか出せない音」が響くというイメージ、しっかり伝わりました。
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続いて描かれたのが、
カイの演奏にショックを受けるパンウェイ、レフ・シマノフスキ、その他のコンテスタント。
カイの次の演奏者は、かえって吹っ切れて弾くことができる!と、カイを祝福。

そして、この会のタイトルどおり、
審査の紛糾が描かれます。
審査員それぞれの思惑がぶつかりあう審査会場。
カイをファイナルに残すことは危険だという発想のもと、修平とカイのバーター取引案まで飛び出します。
しかし、このとき「貧しい者でも才能があれば参加できる」新しい方式での審査の目的を忘れずに、という審査委員長の発言が。(ビデオ審査や過去のコンクール歴の重視を廃止した、とのこと)

こうした経緯を描いたのちの発表

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「落ちる気がしない。僕はやっと僕自身の音を発見したから」
という修平の名前は呼ばれず。


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カイ自身は自分の通過がなったか否か聞き取れなかったようですが、まあ、通過間違いなしでしょう。

今後に向けて気になるのは次のような点。
  • 「パンウェイの父」としてマスコミの取材を受けていた、邪悪な様子まるだしの男も気になります。戦争かテロ事件現場のような情景、その負傷の様子は何を語るのか。
  • 阿字野の語りには「カイを森の端から救い出す」「カイの出自を揶揄する世間からはばたかせる」という意図が感じられます。これは、カイ自身の心理と合致しているのかどうか。カイの母、レイちゃんは今後、どう絡むのか。
音楽もストーリーも、深いです。
社会派メッセージにも、ハッとさせられます。

ポーランドの公園でくつろぐカイが、鳥に急かされる場面からスタート。
今回は、
  • レフ・シマノフスキ
  • 一ノ瀬海
この二人の演奏が、たっぷり聴けました。
一番の印象は、
「カイの演奏は、ただものではない」
ということ。
流れるナレーションをそのまま具現する演奏をしていました。
その自在なコントロール、世界観の表現力に脱帽しました。
素晴らしいピアニストが担当しているに違いありません。
これからも、カイの演奏がたっぷり聴けますように!


もちろん、シマノフスキの演奏(前回のショパコン入賞のシモン・ネ―リング担当)にも引き込まれました。彼は私のお気に入りでもあります♪

著名なピアニストの孫レフ・シマノフスキの演奏。

「これこそが、我々の待ち望んでいたショパン!」
「なんて美しいピアノ」
「1次よりさらにいい」
「これがポーランドのショパン」

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レフの心の声
「エミリア、君の分まで弾く!」
「これが終われば僕の罪は許される」
彼の1歳上の姉、エミリア・シマノフスカの悲劇。
レフはどう関係しているのでしょうか。
今後への鍵となる予感がします。

審査員の談笑
「アダムスキを落としたことを悔やむところだったが、これで大丈夫」
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ポーランドの心を表現したピアノに会場は引き込まれます。




そんなシマノフスキの余韻が残るなか
シマノフスキの優勝が決まったとでもいう会場の雰囲気の中で
カイが登場
すさまじい歓声
「シマノフスキに匹敵する音楽をしなくては、会場は納得しない」


「一ノ瀬のピアノはその導入だけで会場の色を変えた!」
「そうそう。マズルカはそれでいいんだよ」
「颯爽としたマズルカ。まるで子供が春に外へ飛び出すような」
「自然な音楽。あたたかくて、なつかしくて」
「一面を黄色に染め上げる、あの我々の菜の花」
「留学もしていない一ノ瀬になぜこんなマズルカが弾けるんだ」
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「カイは昔から大地から生まれたような曲を弾かせると第一級だった」阿字野
「一ノ瀬は、誰の後に弾こうが、奴は奴のピアノを弾くだけ」修平の父

「マズルカは素晴らしかった。認めよう。しかしここまで聴衆の心をつかんでしまったら、次のポロネーズが大変だぞ」
予想に反して、抑えて入る英雄ポロネーズ

「行こう、森へ!」
1回目より2回目を勇壮に
主題を自在に弾き分けて、曲の世界を作り上げるカイ

「こいつ、本物だ!」


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すてきな曲目たち。
またゆっくり聴きたいと思いました。


原作を読んでいない私に生まれた新たな疑問。
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この男性(初登場?あ、もしかしてカイの少年期に登場済み??)だれ?
これからどう絡む?
そして、先週ほのめかされた、カイの指の負傷は?

「ファイナルにさえ進めれば、面目は保たれる」
こんな考えの吐露から番組はスタート。第2次予選の続きです。
今回の主人公は、雨宮修平。
タイトルの「覚醒」とは、修平の覚醒でした。
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修平を支えとなったもの、それは、第1次予選後に交わしたアダムスキとの会話でした。
これまでの修練を信じて、自分を信じて、聴衆に届けるために、弾く。

マズルカ 作品59
「カイ君に聞かせるために弾く」
「君の記憶に深く刻めるように」
「僕は今、たしかにピアノと魂がつながっている」
「これが、僕だけのピアノ、僕だけのショパンだ」
「ぼくはきっと、僕のピアノが好きになる」

最初の1音で「ピアノが変わった!」(会場全体)
「これは雨宮の、初めてのピアノだ」(カイ)
「今まで、こんなにピアノに入り込めることはなかった。長年の課題でもあった」(父)
「コンクールはピアニストを大きく成長させる」(エージェント)
「修平!危険だ。変化は今でなくていい。バランスを崩すな。それ以上、入り込むな」(父)
「これはコンクールなんだ。ミスは困る」(父)

現在の恩師 オンジェイ・パブラス
「修平。今日初めて私は君を本気で指導したいと思ったよ」
「今までで一番のピアノだった。ここからが君のピアニストとしてのスタートだ」
カイ
「雨宮、僕は君に出会えてよかった。このピアノが聴けてよかった」
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翌日の紙面を飾った修平です。
しかし、父は手放しに喜んでいるわけではありませんでした。
第2次予選の演奏を終えた修平を見ての父親の独白
「初めて君はピアニストとしての喜びを知ったのか。しかし、この場でなくてもよかった。ミスを審査員がどう見るか」

誰がファイナルに残れるか、人数を数えながら残りの演奏を聴く父親
「修平が残れるかどうか、ギリギリのところにいる」

自身の「覚醒」を素直に喜び、自分の演奏が認められることを信じて疑わない修平は、父親のこのような態度が理解できません。
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審査に対する疑念も取りざたされていました。
弟子の審査には参加できない規定があるのですが(そのため、修平の覚醒を高く評価したポーランド人恩師は、修平の審査に参加できません)、「アダムスキが落ちたのに、なぜこんなコンテスタントが残るのか!」と思わせるポーランド人コンテスタントが多いことから、
「ポーランド人審査員同士での点数のやりとりで、弟子を残している」という噂は真実なのか、と。

このあたり、ひと昔まえの審査かもしれませんね。
こういった疑念を受けて、近年では、審査員の採点表がコンクール終了後に公開されています。

第2次予選に通ればファイナル、というシステムは、今のショパコンとは異なります。
今は、第3次予選までありますから。
ますます難しくなっていくコンクール。
そんななか、なんとか公平を保とうという主催者側の努力もなされている、ということに改めて気づきました。


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修平役の高木竜馬さんの演奏、素敵でした。
番組そのまま、冒頭のマズルカが秀逸だったと思います。
ソナタやポロネーズで「没頭しすぎてミスが出た」とはあまり感じらませんでしたが、彼自身としては、少し「荒らして」演奏した……という側面はあったのかもしれません。



【追記】
次回はいよいよカイの第2次予選演奏、でしょうか。
突如、カイの「4週間前の突き指」という話題が出てきたことが気になります。
阿字野を蚊帳の外に、ムッシュ・セローと意味ありげな視線を交わしていたカイですが、次への伏線?

今回の主人公は、中国人コンテスタント、
パンウェイ
です。
その演奏を、彼の生い立ち、さらにはカイの師匠でもある阿字野壮介の演奏と結びつけて語ることが、
今回の主眼のようでした。

さて、第2次予選の開幕です。
<第2次予選>
第1次予選同様、午前4人、午後5人が演奏するスケジュール
課題のソナタ、マズルカ、ポロネーズをやはり40分~45分にまとめる

初日から第1演奏者、第2演奏者として続けて登場するのが、この2人。
  • ソフィー・オルメッソン(ロン=ティボーで3位)
  • パンウェイ(ロン=ティボーで優勝)
演奏前から、ともに注目されたロン=ティボー国際音楽コンクールでの対比、特徴などを取りざたされている様子。特にパンウェイの人気が凄まじく、立ち見も出ます。聴衆にはカイ、修平、阿字野たちの姿も。
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なかでも注目されているのが
  • パンウェイの演奏と、阿字野壮介の演奏との相似性
パンウェイ本人も
「俺のピアノは、世界唯一の、阿字野を継承するピアノだ!」
と自負しており、会場で「生身の阿字野」を見たことに興奮します。
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ソフィとパンウェイのプログラムは、
次のポロネーズとソナタが被っていました。 

  • ポロネーズ第5番 作品44 <「ポロネーズの中でもっとも悲劇的な曲」と紹介されていました>
  • ピアノ・ソナタ第2番   作品35「葬送」

ポロネーズに、パンウェイの独白が重なります。
「ポーランドの悲劇なんてどうでもいい。悲劇なんてどこにでも転がっている」
「俺にとっての悲劇はこの世に生まれ落ちたこと」
「焼けただれた骸から、俺は生まれ落ちた」
「生まれる前から”爆弾”と呼ばれていた」

阿字野の独白
「この音楽の底流にある怒りと絶望は、これは私のものではない」

描き出されたパンウェイの人生とは、

望まぬ妊娠で帰郷し、精神に異常をきたした母から生まれ、「爆弾」と呼ばれて虐げられていた少年。そんな彼を、ある金満男が、ステイタス向上の道具として「ピアノを弾く神童」とすべく「買い取った」のでした。
「ピアノが弾けないなら死ね!」
と罵倒され、ピアノ演奏を強要される少年にとって、阿字野宗助のピアノは、地獄に垂らされた1本の蜘蛛の糸だったのです。猛然と阿字野のピアノをなぞる少年を見て「殺さなくてよかった」とほくそ笑み、彼に「パンウェイ」という名を与えた養父パンハオ。
  • ピアノ・ソナタ第2番 作品35「葬送」
「ここまで激しく、ここまで美しい葬送は聴いたことがない」という会場のどよめき。
回想シーンは
「ピアニスト阿字野は死んだ!」
と、阿字野が弾けなくなったことに快哉を叫ぶ養父の姿。
葬送行進曲の「死」が重ね合わされます。
  • パンウェイ vs 阿字野
他人と比較せずにはいられない、人間の心の闇、ですね。「ソフィ vs パンウェイ」なんて、まだ罪の軽い範疇でしょう。
  • 雨宮修平 vs 一ノ瀬海
これを「修平の父 vs 阿字野宗助」の「代理戦争」と見る人も。重いです。
  • 演奏家 vs 同世代のライバル演奏家
  • 演奏家 vs  世代が上の憧れの演奏家
  • 師匠 vs 弟子
  • 親 vs 子
音楽の表現を「勝ち負け」という一つのスケールで測るなんて、そもそも無意味、とは思いつつも、コンクールに魅せられるというのも、また事実。

パンウェイのピアノを聴いて感想を求められたカイの返答が秀逸でした。
「わくわくした。僕も早くあの舞台に立ちたいと思った」
これは、まさに、素晴らしい反応ですねえ。

対する修平。
「僕は負けない。前に進むために」

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ところで、パンウェイのプログラムのうち、
マズルカ 作品33 について、
第1曲 嬰ト短調 
第2曲 二長調
の「順番を入れ替えた」ことに、カイが
「親近感を覚えた。僕もきっと同じ順番で弾いた」
と述べていましたが、番組中の演奏順は原曲どおりだったような?
このあたり、見返してみる必要あり、かもしれません。


パンウェイの演奏を担当している牛牛(ニュウニュウ)くん、リアルでは実にお育ちのよさそうな好青年です。たしか、キーシンのように、ごく幼いうちから来日もしてリサイタルを重ね、「題名のない音楽会」などのテレビ番組にも頻繁に登場している印象があります。
素晴らしい演奏でしたけれど、ナレーションに言うような凄惨さは感じなかったかなあ。
なかなか難しいですね。

第2シリーズは、ショパコン第1次予選の結果発表の場面からスタート。
「一度目の通過者リストは破棄されまして、ただいま二度目のリストを作成中です」
とのアナウンスが。
すかさず、会場から「よからぬ点数操作をしている」ことへの疑念の声が上がります。
なるほど。
審査結果への疑念、審査をめぐるあれこれが、今回のテーマのようです。
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案の定、ポーランドで絶大の人気を誇るカロル・アダムスキが非通過となります。
発表会場に集まった人々(マスコミを含む)には、次のようなものが。
  • 既に名声を得ているアダムスキが、名誉まで手に入れようと参加すること自体、図々しい
  • 地元ポーランドのアドバンテージどころか、ポーランド人審査員たちがアダムスキを貶めている
  • ポーランドの審査員に師事せずにスターにのしあがった者は、審査員に切り捨てられる
  • レフ・シマノフスキというポーランドの新星が現れたから、審査員は心置きなくスターを切り捨てた
審査員に対する記者会見で、地元の若手記者がこの件についてかみつくと、
  • アダムスキはパフォーマンスも技術も「ある意味」見事だった。つまり、聴衆にはアピールする演奏だった。普段の彼自身のコンサートの演奏なら、成功だろう。
  • しかし、ここはコンクールの場。彼の演奏には、楽譜の読み込みが甘く、基礎練習を怠っていたのではないかと思える箇所がかなりあった。
一方、審査員の中には
  • アダムスキのプログラムは、ドラマティックな聴き映えのする曲を並べていて、指の回りが重要な難曲を避けている。
という指摘に「本当にそうだったのだろうか」と疑念を抱く一人も。


また、次のような対立も明らかになります。
  • このコンクールはショパンのためのコンクール。ショパンをしっかり学んだ演奏が求められる。
  • ショパンの残した多くの直筆の楽譜は、今日までポーランドの音楽家たちによって大切につながれてきたショパンの遺書。楽譜の示す範囲を逸脱した、遺書に反する演奏は認められない。
 VS
  • ショパン本人の演奏、160年以上も前に死んだ人間の演奏を実際に聞いた者はいない。いったい何を基準にショパンらしさを決めるのか。
  • 自筆の楽譜自体、すべてが解明されているわけではないのに、審査員の考えるショパンだけが揺るぎないものだとなぜ言えるのか。

ショパンコンクールの「権威」とは?
「楽譜に忠実」とは何をさすのか?
大きなテーマです。
例えば、1980年のショパコンで「正統派のショパンではない」として落とされたポゴレリチ、その後の活躍、注目度の高さは特筆ものです。(→インタビュー記録 リサイタル2017

また、ここでは「指の回る難曲」の演奏がコンクールでは必須、とされていますが、
第10回浜松国際ピアノコンクールでは、逆にコンテスタントのこういった思い込み(リストのソナタをプログラムに入れるべき等)が間違いである、といった指摘がなされていたように思います。(→審査員ヤン・イラーチェク・フォン・アルニン氏のインタビュー


さらなるテーマは、コンテスタントの心理状態。
アダムスキが落ちたこと、落ちても大勢の注目を浴び続けなくてはいけないことに大きなショックを受けた雨宮修平の危うい心理状態。
めまいを覚え、「一人になりたい」と修平が駆け込んだトイレには、アダムスキがいたのでした。

修平の主張
「誰にも負けないくらい練習してきた」
「もうこれ以上頑張れない」
「楽しんで弾くなんて僕にはできない」
「僕は努力することしか知らない僕に、取り柄があるのか」
「僕はからっぽだ」

アダムスキ
「僕が練習してこなかったとでも?自分だけが頑張ってるみたいに言うな」
「練習しすぎて倒れるしかない、そんな張りつめたピアノ、誰が聴きたい?」
「何のためにピアノ弾いてるの?檻の中で自分だけのために弾きたいわけじゃないんだろう?」
「君がピアノに命を与えるんだよ」
「大丈夫。君にはまっすぐな気持ちがある。本当は勝ち負けじゃないけど、そのまっすぐな気持ちがあれば、きっと乗り越えられる」

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今回のタイトル、「第13回 ショパンの旅路」とは、アダムスキのことでした。
僕はここへ来る前、ショパンと旅をしていたんだよ。
ショパンの足跡をたどって、無料ライブや演奏会をしながら、ショパンの心を知ろうとしていたんだ。
ワルシャワ、ウイーン、プラハ、パリ、マヨルカ島とかいろいろ、約3年かけて旅をして、ショパンの心に没頭した。


幼かった時代に、
「僕は先生みたいな貧乏な大人にはなりたくない」
と啖呵を切って恩師のもとを飛び出し、スターにのし上がったアダムスキ。
修平の「何のためにピアノを弾くのか」という問いに
「自分を幸せにしてくれたピアノを多くの人に聞いてもらいたいから。生活費も稼げるしね」
と答えたアダムスキですが、修平と別れた後は、

「僕は何をやっているんだろう。偉そうに雨宮に助言したりして。僕は、やり直すことができるかな。味方もなく、一人で出直すなんて」

と、自分を冷笑するのでした。
そんな彼の前に現れたのが、かつての恩師、ラファエル先生。
「ニュースを見て、お前がしょげてやしないかと思ってね」
その恩師の次の言葉に、うるっと来ました。

「あのプログラミングは、観客にショパンの一生を見せようとしたのかい。タイトルをつけるとしたら、ショパンの旅路、かな。ショパンに聞かせたかったな。本人が聴いたら、きっとお前さんが大好きになるよ、カロル。」


ほんと、コンクールを度々ネット視聴して思うことですが、コンクールの醍醐味って、
順位という結果より、心に残る演奏やコンテスタントに出会えることですね。

さて、カイも無事通過。
周平は、第二次予選でのカイとの「真っ向勝負」に心を引き締めます。
次回からは、演奏曲目も増えるでしょうか。
楽しみです。

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