PIOピアノ雑記帳

ピアノ、クラシック音楽関連の話題を主とした雑記帳blogです。

カテゴリ:【コンサート・レビュー】 > 鍵盤&弦楽器以外・リサイタル

B→C バッハからコンテンポラリーへ
 225 多久和 怜子(フルート)

2020年10月20日(火)19時開演 21時20分終演
@東京オペラシティ リサイタルホール

[出演]
多久和 怜子(フルート)

[共演]
入江一雄(ピアノ/チェンバロ)*
大家一将(パーカッション)**

<プログラム>
マウアー:ピッコロ・ソナタ(2002)*
武満 徹:声(ヴォイス)(1971)
J.S.バッハ:《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番》ニ短調 BWV1004から「シャコンヌ」

~休憩~

J.S.バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ イ長調 BWV1032 *
田村文生:皮、木、金による…(2020、多久和怜子委嘱作品、世界初演)**
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ *
ブーレーズ:フルートとピアノのためのソナチネ(1946)*

アンコール
ラヴェル:「マ・メール・ロワ」より「妖精の園」
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かなり前に予約……と思ったら、発売は6月。
はるか昔の印象なのは、このところの多忙のせいかなあ。

コンテンポラリーって、奏法も多岐にわたるということがよくわかりました。
指を鳴らしたり(マウアー)、
声を出しながら吹いたり(武満)。
普段は聴かない音色をたくさん聴きました。

ピアノ、チェンバロ、打楽器、という共演楽器、
ピッコロ、フルート(バッハのときは異なる楽器だったような)とソロの楽器にもバリエーションがあって、楽しめました。

打楽器との初演楽曲、おもしろかったです。
作曲者自身の解説によると、
「模倣や変奏を通じて徐々に成立してゆく前言語的な対話と、そこからの逸脱の繰り返し、また、関連性の希薄な時間の平行によって構成されている」「いわゆる西洋近代音楽的な意味で洗練、合理化されたものとは異なる側面が念頭に置かれている」
とのこと。

たいへんな集中力を要する、チャレンジングなプログラム。
聴く側としても。
後半は、かなり疲れてしまいました。
アンコールでほっとした感じでした。

自由席の会場は
「座席には余裕がありますから、どうぞご自由に間隔をとって」
といった指示。
中央前方の席は、おじさま方が結構「密」に集合しておられました。
クラシック・コンサートではちょっと珍しい光景かも?
コアなファンをつかんでいらっしゃるのでしょうか。

ソリストの方、昨晩は前髪は下ろし、後ろはアップに結い上げておられました。
その髪型からも、演奏スタイルからも、
小柄でシャキっとした、集中力の演奏家、といった印象を受けました。

2020年8月26日(水)12:10開演 13:20終演【第1部】
@横浜みなとみらいホール 大ホール

The Rev Saxophone Quartet
  • 上野耕平(ソプラノサクソフォン)
  • 宮越悠貴(アルトサクソフォン)
  • 都築 惇(テナーサクソフォン)
  • 田中奏一朗(バリトンサクソフォン)

<プログラム> J.S.バッハ
  • 北方寛丈編:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番より
        プレリュード、ガヴォット、ブーレ、ジーグ

  • 坂東祐大編:クラヴィーア練習曲集 第3部より
BWV685, 802~805,  684

  • 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番より シャコンヌ
 アンコール ・G線上のアリア


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堪能いたしました。サクソフォンの響き。

1階前の方の席だったこともあって、ステージ上で演奏者が位置を変えるたびに、音の響きが変化して聞こえることも体感できて、それもまた感動でした。

4人いると、さまざまな組み合わせが楽しめるのですね。
1曲目は、ザ・定番の席について座って演奏。
2曲目は、
  • 4人全員でステージの奥の方で立って演奏
  • ソプラノ・アルト・テナーのトリオ
  • アルト・テナーのデュオ
  • ソプラノ・バリトンのデュオ
  • ソプラノのソロに、アルト・テナー・バリトンのアンサンブル
  • テナーのソロに、ソプラノ・アルト・バリトンのアンサンブル
  • アルトのソロ
という具合に、
組み合わせも立ち位置(座り位置)も変え、暗転を繰り返しつつの演奏。
目にも耳にも新鮮で、まさに響きに包まれる気持ちになりました。

そして、シャコンヌでは、そのテクニックにも圧倒されました。
つくづく、すごい4人です。

TV「題名のない音楽会」はもちろん、ここしばらく、日曜日夜はYouTube配信のRev.の部屋を視聴していましたし、生演奏を聴いた経験もあって(→)彼らのことは「知ってる」気になっていたのですが、いやいや認識が甘かった。
みなさまの、シュっとした見め麗しさ、そして、音色の麗しさ、ステージ構成、
「総合芸術」として楽しめました。

短い時間でしたけれど、バッハの世界、しっかり深く堪能いたしました。

2020年6月17日(水)15時開演 15:40終演

ホルン:福川伸陽
ピアノ:鈴木優人

<プログラム>
  • ウェーバー:魔弾の射手 序曲より
  • ロッシーニ:狩のランデブー
  •  J. S. バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番より
  •  ベートーヴェン:ホルン・ソナタ作品17より 第1楽章
  •  チャイコフスキー:交響曲第5番 第2楽章より
2020-06-17

狩りの道具だった時代の、シンプルな形のホルンから、現代のピストン式ホルンまで
4つのホルンを持ち換えて、「ホルンという楽器の歴史」を説明してくださいました。
時代背景もわかって、面白い♪

圧巻は、最後のチャイコフスキー。
なんと「ホルンだけ」でオーケストラの演奏を再現
第2楽章の冒頭部分だけですが、あまりの美しさに涙が出そうになりました。
画像は、その音楽にあわせて提示されたもののスクリーンショットです。
なんでも、演奏者自身の撮影で、
ご自宅の近所だとか。。。うらやましすぎます。

2020年6月10日(水)19時 Live 配信開始
(チケット購入者は、アーカイブが1週間、何度でも視聴可能)

ソプラノ&アルト・サックス:上野耕平
ピアノ:山中惇史

<プログラム>
  1. J.S.バッハ:G線上のアリア
  2. シューマン:3つのロマンス
  3. バザン/山中惇史:ロマンス
  4. トマジ:バラード
  5. リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
  6. ビゼー/山中惇史:カルメン・ファンタジー
(アンコール)ニューシネマパラダイス・メドレー
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な~んて、記載してしまいましたが、
実際に聞いたのは2曲目~4曲目のみ。
自宅にいて19時開演、というのは、時間捻出難しすぎます!
(よって、アンコール曲とか、わかりません。あとで追記します。)

でも、シューマンが一番聴きたかったのと、
続く2曲が私にはお初の曲目で、とても素敵だったので満足です。
残りも、後ほどゆっくりと。

また、トークがいいですね。上野くんの、山中くんの本音がどんどん出てくる。
シューマンは、何度も二人で合わせているそうですが、
本日のは今までとは「違う世界が見えた」のだそうです。
「観客がいない」
という環境が、演奏者の内面へ、内面へ、と音楽を導いていく結果になって、
それは、シューマンという人の音楽の発見にはプラス効果なのでは……といったことを話していました。(私がかなり表現を変えてしまっているかも。我が思い入れで曲解してる可能性もあり💦)
心に沁みる演奏でした。

そして、この終演後、楽屋話もLIVE配信していて、
こんなことって、今までにはありえなかったことだなあ……と思いました。

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今日の演奏会でのアクシデントは、上野くんのタブレットの譜めくり暴走、
そして、ピアノの譜めくりさんによる、2枚重ね一挙めくり、だそうです。
それをすぐさま笑い飛ばす二人、さすが器が大きい!

今日の名言。
「シューマンは”鶴の恩返し”」(by 山中惇史)

本心隠して、自分の内面に向かっていくその精神構造は、”おつう”
ってことかな?
山中くん、芸大に11年(作曲科の学部+大学院修了のあと、ピアノ科4年)通ったということも初めて知りました。
上野くんが学部卒業に5年かかったのだとか。
二人ともまだ20代なのかな。二人で組んで演奏するようになってまだ4年というのにもびっくり。
ほんと、若いうちって、どんどん吸収して成長していくんだなあ。。。

第474回 日経ミューズサロン
エマニュエル・セイソン ハープ・ソロ・リサイタル
~メトロポリタン歌劇場首席ハープ奏者が奏でる「自然の饗宴」組曲とバラードの調べ~

2018年7月2日(月)18時30分開演 20時55分終演
@日経ホール

≪プログラム≫

J.S.バッハ/フランス組曲 第3番 ロ短調 BWV814
M.トゥルニエ/イマージュ第4組曲「魔法の鳥かご」
L.C.ダカン/かっこう
M.グリンカ(バラキレフ)/ひばり
F.リスト(ルニエ)/夜鳴きうぐいす
J.P.ラモ―/鳥のさえずり
H.ルニエ/幻想的バラード

~休憩~

C.ドビュッシー/ベルガマスク組曲
  第1曲「前奏曲」第2曲「メヌエット」第3曲「月の光」第4曲「パスピエ」
A.アッセルマン/演奏会用練習曲「泉」
M.トゥルニエ/森の泉のほとりにて
プレル/雨にぬれた庭
C.サルゼード/バラード

アンコール
R.シューマン/森の情景 第7曲「予言の鳥」
F.クープラン/神秘的なバリケード
M.トゥルニエ/朝に
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友人に誘われて、ハープのソロ・リサイタルを初めて聴きました。
そして、ハープという楽器への概念を改めました。
大きな楽器の、豊かな響き。
これは、けっして女性的なイメージを持つものではありません。

楽器と弾き手の関係、その一体感にも、唸らされました。
まさに弾き手自身から音楽があふれ出している感じ。
その呼吸、間(ま)の見事なこと。

仕事帰りにかけつけるコンサートって、睡魔に襲われることが多くて、
特にハープのソロ、なんて言ったら、爆睡しちゃうかも……と危惧していたのが嘘のよう。
惹きつけられて、あっという間の2時間半でした。

会場も大興奮で、拍手鳴りやまず。
アンコールの2曲目、3曲目は、おそらく予定外だったのでは。
「時間、大丈夫??」と言わんばかりにステージ袖を覗き込みつつの演奏となりました。

まるでバレエ・ダンサーのような身のこなし、ステージ・マナー。
そして、力強い掻き鳴らし。
一流の演奏家って、一種のアスリートですね。
音楽とは、演奏家とは、演奏とは、……いろいろ刺激を受けました。
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コンサート・シリーズ ”五つの記憶”より
 Scene3 ≪収穫≫
(Scene1≪旅立ち≫ 2≪灯り≫ 4≪回帰≫ 5≪ラスト≫)

2017年11月13日(月)19時開演 21時終演
@浜離宮朝日ホール

≪オール・ベートーヴェン・プログラム≫

クラリネットとファゴットのための3つの二重奏曲WoO.27 第1番 ハ長調

三重奏曲 第4番 変ロ長調 ≪街の歌≫ Op.11 (七重奏版編曲:吉田誠)

~休憩~

七重奏曲 変ホ長調 Op.20

アンコール
同上 七重奏曲より 第6楽章

【クラリネット】吉田誠 【ヴァイオリン】成田達輝 【ヴィオラ】安達真理 【チェロ】伊藤悠貴 【コントラバス】高橋洋太 【ファゴット】小山莉絵 【ホルン】福川仲陽 【演出】田村吾郎
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実にみずみずしい、生き生きとした演奏でした。若いって、すばらしい。

演出つきのステージって??……と思いましたが、ステージ上方の壁に、多色使いのイメージ絵が筆書きされていく様子をプロジェクタで投影してから、ステージが明るくなり演奏開始……というもの。
若々しい演奏者の楽し気な雰囲気と相まって、素敵なムードを醸し出していました。

音楽的に超一流の人々って、きっと人間的にも極上なのでしょうね~。
お互いにリスペクトし合いながら、音楽をともに創り上げていくことを楽しんでいる様子、ダイレクトに伝わってきました。
ビビッドに反応しあう様子が間近に見られる、というのは至福の体験です。
今回の席は前から2列目。しかも目の前の1列目の席は偶然にも空いていたため、まさに正面から至近距離で演奏家の皆様に対する格好となったのでした。

これだけのメンバーを集めたのは、吉田誠くんの人徳でしょうか。
編曲の見事さにも舌を巻きました。これからも注目していきたいと思います。
(画像は今回の公演チラシより転載)
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90min.concert
夜クラシックvol.13 福間洸太朗(ピアノ)/吉田誠(クラリネット)

2017年6月30日(金)19:30開演 21:10終演
@文京シビック大ホール

<プログラム>
ドビュッシー:「ベルガマスク組曲」より”月の光”(Pソロ)
メサジェ:ソロ・ドゥ・コンクール
ショパン:ノクターン第2番 変ホ長調 Op.9-2
ショパン:ワルツ第2番「華麗なる大円舞曲」Op.34-1
メシアン:鳥たちの深淵(「世の終りのための四重奏曲」より)(Clソロ)
ミヨー:協奏的二重奏曲

サティ(福間・吉田編曲):ジュ・トゥ・ヴ
ジャン・ルノワール(福間編曲):聞かせてよ、愛の言葉を(Pソロ)
武満徹(福間・吉田編曲):ワルツ(映画「他人の顔」より)
サン=サーンス:クラリネット・ソナタ 変ホ長調 Op.167

アンコール2曲

****************

洗練かつ闊達
フランスのエスプリに満ちたコンサートでした。
お二人とも、パリ国立高等音楽院で学ばれた(ただし時期は重ならず)ということが納得されました。

文京シビックホール、初めて行きましたが、響きが良くてびっくり。
クラリネットの音が朗々と響いてきました。
かすかな微音もはっきりと届きました。
1階席中央を押さえてくれた友人に感謝です。

若い才能っていいですね。溌剌とした輝きを感じました。
そして、そのコラボレーションで輝きがますます増すことも。
お洒落でしなやかな音楽が堪能できました。

画像は、この公演のためのインタビュー記事byシビックホールより。

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ナタリー・デセイ&フィリップ・カサール デュオ・リサイタル
2017年4月19日(水)19時開演 21時15分終演
@東京オペラシティ コンサートホール

ナタリー・デセイ(ソプラノ)
フィリップ・カサール(ピアノ)

<Portraits de femmes>

モーツァルト:歌劇≪フィガロの結婚≫よりスザンナのレチタティーヴォとアリア
 「とうとうその時が来た~恋人よ、早くここへ」

シューベルト:ひめごと D719
シューベルト:若き尼 D828
シューベルト:ミニョンの歌 D877  Nr.4
シューベルト:ズライカⅠ D720
シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェン D118

モーツァルト:歌劇≪魔笛≫よりバミーナのアリア「愛の喜びは消え」

ブフィッツナー:歌曲集≪古い歌≫ op.33
Ⅰ私の眼が輝く Ⅱ私はお化けが怖くない Ⅲうぶな子のあなた Ⅳ朝霧の中をあてどなく歩くと Ⅴ愛しい人が雀のように歌うなら Ⅵ少女がリンゴを齧ったら Ⅶ入り来たれ、高貴なる戦士よ Ⅷ明るい月があんなにも冷たく遠くに輝いている

~休憩~

ショーソン:終わりなき歌 op.37

ビゼー:別れを告げるアラビアの女主人

ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女(ピアノ・ソロ)
ドビュッシー:水の精(ピアノ・ソロ)
ドビュッシー:未練
ドビュッシー:死化粧

グノー:歌劇≪ファウスト≫より宝石の歌「何と美しいこの姿」

(アンコール)
・ドリーブ:カディスの娘たち
・R.シュトラウス:僕の頭上に広げておくれ op.19-2
・ドビュッシー:歌劇『ペレアスとメリザンド』第3幕より
・ドリーブ:歌劇『ラクメ』より「美しい夢をくださったあなた」

*****************

素晴らしいデュオ。
歌も、ピアノも、この二人ならではの、他に振替不可能な完成度。
歌を聴いてこんなに感動したのは初めてでした。

女性の肖像、というテーマにぴったりのナタリーの美声に
それを温かくしっかり支えるピアノの掛け合いの見事なこと。
また、観客サービス、お茶目な演出も多々あって実に楽しいコンサート。
歌曲伴奏ならぬモーツァルトのピアノソロ曲を弾き始めたカサール氏に、ナタリーが拗ねてみせるという最初の出だしから、ぐぐっと惹きつけられました。
コケティッシュなモーツァルトから、暗く冷たいシューベルトへの転換も見事なら、
伴奏譜すべてを最初から譜面台に立て、ささっと片付けるだけ、
えっちらおっちら楽譜を広げる所作皆無、というというピアノ側の配慮もあっぱれ。

この場、この時に居合わせることができた幸せ感いっぱいになりました。

アンコール曲の数からも、会場の熱狂ぶりがわかりますが、
その楽譜を、ある時はカサール氏が、ある時はナタリーが隠し持って舞台に登場し、マジックよろしくパッと広げて見せる、という仕掛けも小粋でした。
さらには、カサール氏が大きな花束を手に現れ、ナタリーに手渡すや
"Happy birthday to you~♪"と大音量で弾き始めたのにはびっくり。
なんと今日はナタリーの誕生日だったようです。
その後、い ったん会場全体が明るくなり「もうお開きですよ~」と会場側がアピールしたにもかかわらず拍手が鳴りやまず……と思ったら、
今度は、バースデイケーキを抱えて二人が登場。サプライズの4曲目アンコールとなりました。

祝祭感に満ち溢れた、幸せなコンサートでした。

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