著者: スティーブン・イッサーリス、板倉克子
出版社: 音楽之友社
価格: 3080円
発売日: 2008年05月03日

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『もし大作曲家と友だちになれたら…―音楽タイムトラベル』の続編です。
作曲家に対する著者の愛情炸裂!
題名どおり、彼らと友達になれそう。さあ、次は作品の方を聴いてみよう!という気になります。

取り上げられている作曲家は5人。

ジョージ・フレデリック・ヘンデル(p.9-72)
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(p.73-160)
フランツ・ペーター・シューベルト(p.161-220)
アントニン・ドボルザーク(p.221-294)
ガブリエル・フォーレ(p.295-377)


この本のスタンスは、次のくだりが象徴的です。

 この音楽家(ヘンデル)についてくわしく――というか、まぁ、いくらか調べがつくようになったのは、彼がイギリスへ渡って以降なんだ。ありがたいことに、当時のイギリスはどこの国よりも新聞や雑誌、小冊子の出版が盛んだったから、資料がたくさん残っている。ただ、ぼくらにはありがたくないことに、ヘンデルは私生活をとても大切にするひとだったと見えて、自分のほんとうの気持ちはだれかに打ち明けるなんてことは、少なくとも手紙ではめったになく、というかむしろ、こんにちまで残っている手紙にはほぼそうした記述はない。(p.20)

日本語翻訳版では、読みやすさを優先して原著にある「注」を省略した箇所が多いとのことですが、原著では、資料の出典を細かく記載しているとのこと。
さすが、イッサーリス!
いい加減な二次情報を載せる、なんてことはしないんですね。そうでなくては!

自分の妄想、空想に基づく内容を書く場合は
「もしかしたら、ヘンデルは、……なんてこともしたかもしれない」
といった書き方をして、そう思う根拠を示しているのです。

請求書や手紙から、どういう面でお金に苦労していたかがわかる、とか
楽譜出版社との間にこんな手紙が残っている、とか
結婚するまでの、また結婚後のやりとりからわかることは、とか、
おもしろい情報がいっぱい!

史実への忠実さと、読む上での楽しさをともに実現する書き方に感服いたしました。

原書にあった長い「ピョートル・イリノチ・チャイコフスキー」の項が日本語版では著者と相談のうえで割愛されたとのこと、これは残念です。