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小松亮太のタンゴ入門(7)
【出演】バンドネオン奏者タンゴ演奏家…小松亮太

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【第7回】バンドネオンとは何か(1)5/18(水)放送

タンゴの主役ともいえる楽器=バンドネオン
アルゼンチンの人間がバンドネオンを製作することは、ほぼなかった。
99%の楽器はドイツ製。
アルゼンチンタンゴの演奏者は輸入楽器を使っていた。

アコーディオンとバンドネオンは、全く別物。
バンドネオン奏者がアコーディオンを弾くことも、
アコーディオン奏者がバンドネオンを弾くことも、ほぼない。

「ボタンばっかりなのがバンドネオン、ピアノの鍵盤的なのがアコーディオン」
という認識も誤り。
「ボタン式アコーディオン」も世の中にはたくさんある。

簡単に言えば、
  • アコーディオンは縦長(演奏者の顔のところまで楽器がある。ストラップ付で肩からかける。)
  • バンドネオンはほぼ正方形(ストラップなし。高さ23センチ、横面24センチ。すごく伸ばして81センチ)


アコーディオンとバンドネオンには直接的なつながりは薄い。


  • コンサーティーナ(ドイツ語でコンセルティーナ―)がバンドネオンに近い。形は角形か角形。アイルランドで使われている楽器だが、17センチ四方のちっこい奴。アイリッシュバーやスコティッシュバーで演奏される。


バンドネオンのドレミファの配列は見事にバラバラ

説明しようがないほどばらばら引っ張って出る音と縮めて出る音が異なる。

なぜ??

4本を縦に並べて弾き、このままボタンの位置を変えないでひっぱる」「縮める」を続けると、和音がうまく変わり、それだけで曲になる。


★風説1
「バンドネオンは、悪魔が発明した楽器と呼ばれている。」というのは、
日本だけの風説。
ヨーロッパではそんなことは言われていない。
悪魔とセットで語られる楽器と言えば、ヴァイオリン。バンドネオンではない。

バンドネオンのボタン群(右手38個、左手33個)の周囲には数字が書いてあり、バンドネオンの楽譜の音符の上に書いてある数字と一致する。

時計文字の数字が指遣い。
いったん覚えてしまえば、そう忘れるものではない。
バンドネオンだけが特別に難しいとは言えない。ボタンを押せば、誰でも音が出せる。


★風説2

バンドネオンは教会から始まった。オルガンのない教会でその代わりに使われた。

ピアソラが広めた風説。うそ。

本場ドイツで、このような話は全く出てこない。
教会で演奏している写真も、教会で演奏するためにバンドネオンが開発されたという話もない。

1840年代にドイツで発明された。

1880年ごろにアルゼンチンのボカで、アルゼンチンタンゴが誕生。

ドイツではフォークロア、民族音楽のために使われた。
戦争のときの軍楽隊で使われた。
第一次大戦時、中国の青島で日本とドイツが戦ったとき、日本があっさりと勝利。
ドイツ兵捕虜を日本に連れてきたのが、丸亀の収容所。
ベートーヴェンの第九を始めて演奏したのもここ。そのときの捕虜の中にバンドネオン所持者がいた。
1915年。アルゼンチンタンゴを知っていたはずがなく、ドイツ音楽(ポルカ等)を演奏していたはず。

★生演奏の披露
「我らはハンガリー王とオーストリア小隊」という軍楽隊の音楽 by 東京バンドネオン倶楽部