PIOピアノ雑記帳

ピアノ、音楽関連の話題を主とした雑記帳blogです。

カテゴリ:ラジオ > 左手のためのピアノの世界

第13回 【音楽家としての使命】
ピアニスト…智内威雄
2018年9月26日(水)放送→ストリーミング 2018年10月4日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目 (演奏:智内威雄)
  • 宮沢賢治作曲、黒沢健編曲「星めぐりの歌」(林光の編曲に影響)
  • スクリャービン作曲「前奏曲と夜想曲」(1924年製のスタインウェイで演奏)
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内容としては、ほぼ今までの12回の放送振り返りでした。
総括として、今後のプラン(夢)を3つ語られました。
左手のためのピアノ演奏を対象として、
  1. 学校を作りたい
  2. 図書館を作りたい
  3. 無形文化遺産登録をしたい
そして、智内氏自身の5つの顔を提示されました。それは
  1. 演奏者
  2. 教育者
  3. イベント企画者
  4. 社会貢献
  5. 父親
の5つ。
過去の人から受け継いで来た流れの中に自分がいるという意識を持ち続けておられるそうで、ここに至るまでの音楽家たちの足跡を踏まえ、彼自身が新たな足跡を残し、何らかの道しるべになりたい、と。

ここまで自己規定できるってすごいな、と改めて思います。
企画を持ち込まれたから、それに乗っかって話した、というのではなく、
自分で全てを総括・マネジメントして話している、と感じられるシリーズでした。

第12回 【コンクール~左手のピアノ音楽の社会化を目指して】
ピアニスト…智内威雄
2018年9月19日(水)放送→ストリーミング 2018年9月27日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目 (演奏:智内威雄)
橋爪皓佐作曲「モノクローム・コレクション」
リパッティ作曲 「ソナチネ」第3楽章
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智内氏自身とコンクールの関わり
・本来、競い合うことが苦手 
・何かとこだわる性格のため、椅子の高さ調整に時間をとられすぎて落ちる等を経験
・ハノーバー音大留学中に意識が変わる。
「完璧な演奏を目指す場」ではなく「個性が認められる場」と感じ、順位はただのご褒美でしかないという感覚、コンクールは実は自分の演奏を探すのに適した場所だという認識を持つに至る

同じ目標を持った人たちの間に生まれる繋がり
→左手のための音楽をする人々にもこれがほしい→コンクールの立ち上げ

【左手のための国際ピアノコンクール】
埋没した芸術財産を、広く人類共通の財産として知ってもらうために、アマ、プロ、片手、両手の区別なしで実施する。
世界に知ってもらうという意識を込めて「国際」と冠す。

演奏者の頂点としてだけでなく、教育の頂点にあるコンクールという位置づけ。
教育、福祉、その循環のエネルギーとしたい。

【コンクールの歴史】
歴史的には、戦争に傷ついた人々に安らぎを与えるためにスタートした。現代のコンクールはその進化した形
ピアノコンクールで著名なもの
・ショパン国際ピアノコンクール
・チャイコフスキー国際コンクール
・エリザベート王妃国際コンクール(前身:イザイ国際コンクール)

日本ではテレビの影響が大きい
85年ショパコン「若き挑戦者たちの20日間」でブーニン現象
ステレオタイプ的扱いとしては、少女漫画的な美しいイメージ?

国際コンクールは第一次大戦後に急増。国家の威信と連動している。

【コンクールの問題点】
1.芸術に点数をつける
2.若者の一時点だけでなく、成長を追うべき
3.楽器の争いにもなる

第11回 【両手演奏と病から考えるピアノ演奏方法】
ピアニスト…智内威雄
2018年9月12日(水)放送→ストリーミング 2018年9月13日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目 (演奏:智内威雄)

リスト作曲 ハンガリーの神
リパッティ作曲 ソナチネ 第2楽章、第3楽章 
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リハビリから見る身体の使い方
観察からうまれたピアノ練習法 、教授法

(1)両手の演奏家から学び考えるピアノ奏法
★「ピアノという打楽器を歌う楽器にする」ホロヴィッツ
歌とは?
何かしら変化をすることが歌である
ピアノにできないこと=単音でクレッシェンドする(ピアノは一旦音を出したら、あとは減衰するだけ)

ピアノにおける「変化をさせる」技とは?
ピアノにできる変化=音量と速度
自然な歌=自然な音量と速度の変化

★変化は、身体の重心移動で生み出す
  1. 指の重心移動
  2. 手首の重心移動
  3. 上半身から肘を伝わる重心移動
歌や管楽器で言う「息のいれ方 」は、ピアノにおいては「重心移動のしかた」
晩年のホロヴィッツは、重心移動はほとんど使わなかった。
爆発と静寂と、恐ろしいほどに調整されたスタインウエイのピアノ

★指の役割
レガート
指は万能ではない
音量、エネルギー源は他から補った方が良い

鍵盤にフィットさせるために指の形を変える
脱力したい 
過度の上下運動は、手がこわばる元
手の重心移動で、次の音を弾きやすく = レガート奏法

指の第1第2関節を引っ掻くような動作で、レガートっぽくする人がいる
これはよくない 手を硬直させたまた行う動作になる
局所性ジストニアの症状を悪化させる

★ポリーニはペダルの名手

★ギーゼキング または チェルカスキー
肘と手が逆方向に動くと、速く弾ける
映画「ベスト・キッド」の窓ふき動作

(2)リハビリに結びつけた教授法
練習時間を短くする
練習=ピアノに合わせて変化させていくこと
変化をよく観察する=長時間の練習では不可能

変な癖  力を入れ過ぎる
必死に練習する生徒に注意を払う

短期的な結果ではなく、長期的なメニューを考える
夢中で演奏していると、悪い癖も伸ばしてしまう そこに気づいてあげる

先生は、自分のコピーを作ろうとしないこと(教える側が好きなメニューではなく、その人を伸ばしていけるメニューを考える)
一つの方法が万能ではあり得ない
生徒との双方向の情報交換を。
相手の素質・個性を見抜くには、豊富な取材力が必要:レッスン=取材(その人の個性を探す)
生徒が自分の演奏(自分の症状)に自覚的になる

無駄にピアノでトレーニングしない
「どう表現したらよいのか」
いきなり弾き始めない。まず考える。楽曲を整理する。
分類(分ける作業)→ 楽曲を分析 →ようやく表現 ここでやっとピアノを使う
どうやったら楽しそうな音になるのか

自分の身体の癖を知る  演奏法の探求
直すべき癖  →音楽的表現を妨げる癖
直さなくていい癖  →音楽的表現を妨げない癖
障害を引き起こしやすい癖は直した方が良い  例)力み

一生涯演奏をつづけるには「手伝う」こと 「教える」のではない
技の伝承の輪が続いていけば、嬉しい。

第10回 【ピアニストの病(局所性ジストニアを中心として)】
ピアニスト…智内威雄
2018年9月5日(水)放送→ストリーミング 2018年9月13日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目 

シュールホフ作曲 組曲より 前奏曲、フィナーレ 

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左手のピアノ曲を推し進めてきたのは、左手に何らかの障害を負ったピアニストたち。
その障害を分類すると

  • 戦傷 →ウィトゲンシュタイン
  • 局所性ジストニア →レオン・フライシャー等 
  • 腱鞘炎 →大勢 智内氏の恩師も
  • 骨折などの怪我 →両手のピアニストが左手の曲に触れ、回復後もレパートリーとする
  • 脳卒中 →大勢 習熟過程のアマチュアも多い
局所性ジストニア:ピアニストの質・量ともにこのカテゴリの意義が大きい
<発症の仕組み>
  脳の誤作動
  • 智内氏の場合:コンクールに出続けていたころに発症。
  • 最初はちょっとした違和感(ベートーヴェンのソナタ「告別」最終楽章、バッハの平均律など、さほど難易度の高くない曲が弾きにくく感じる)無意識に修正し、違和感を押さえつけてコンクール出場無意識の無理を続けるうちに急速に悪化ジストニアの症状が出た指と、それを庇う指の区別もつきにくくなる音階を弾くことすら難しくなるピアノにどう指を置けばいいかもわからなくなるピアノに限らず、指を使おうとすると拳になってしまう(シャンプー等)ピアノ演奏を聴くだけで、指を巻き込み、こわばるようになる
<治療法>
①内服薬 ②ボトックス注射 ③リハビリ(演奏法の再構築)
  • 智内氏の場合、ハノーファーの専門病院での③の意義が大きかった。こわばってしまった手指の力をどう抜くのか、意識的にコントロールする訓練演奏法の再構築
<発症が疑われる人へのアドバイス>

  • 演奏を止める
  • ジストニア外来へ行く
  • 力で押し込めて弾いていないか観察する
  • 情報を集める 例)翻訳本『どうして弾けなくなるの?』
<今後、望まれること>
  • 教育機関のサポート(発症後のケア  片手で試験が受けられるなど)
  • 「病」ではなく「志」を同じくする人で集まって交流する:ウィトゲンシュタインに共感する人、アマもプロも、両手演奏家も片手演奏家も
<強調しておきたいこと>
  • ジストニアの発症は決して悲劇ではない。
  • 智内氏自身は、今はジストニアを受け入れて共存しており、むしろ発症に感謝している。

第8回 【左手のピアノの奏法】
ピアニスト…智内威雄
2018年8月29日(水)放送→ストリーミング 2018年9月6日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目 
ラヴェル=田中博之 プレリュード 
ブリッジ  3つの即興曲より第3番
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左手のピアノ演奏に求められるテクニックとは
  • 基本動作を見直したもの
  • 特殊ではないが、精度が求められる
  • ピアノの習熟にも役に立つ
具体的には、 脱力  右ペダル

 脱力
両手の演奏では誤魔化しが効く(誤魔化しても音楽に与える被害が少ない)。
しかし、片手演奏では誤魔化しが不可能。

ピアノという楽器の演奏のしにくさ
  • 両手の動きから見ると、キーボードは半円状に並んでいてほしい(実際には一直線上に並んだキーボードを扱わなくてはいけない)
  • 白鍵と黒鍵に段差がある
  • 音程の違いによる感触の差がない(奏者は音程を自分で意識しなくてはいけない)
弾きにくさを克服するために必要になるのが「脱力」
「脱力」は目的ではなくて手段。何のための手段かというと、
  • 身体と鍵盤をフィットさせ、関節の動きをスムーズにするため(脱力   は、関節をスムーズに動かすための潤滑油)
ピアノ演奏に関わる関節とは
  1. 一本一本の手指
  2. 指同士のコンビネーション
  3. 手首と指の連動
  4. 上半身
これらの関節を自在に動かし、ピアノと身体が連動するようにしなくてはいけない。

 右ペダル
「左手の音楽は水墨画だ」と言うことがあるが、これは、
ペダルによって、音のにじませ方に濃淡をつけていることを指す。
「左手のピアノ音楽は、左手と右足の芸術だ」とも言える。

1890年代
ラフマニノフの時代に、現代のペダルが完成(スタインウェイ)。
弾いて切る音のみで構成される音楽が、響きで残像を作る音楽へと変貌。

両手のペダルは、踏むタイミングを問題とするが、
左手のピアノは、ペダルを離すタイミングを問題とする。

 その他の特徴~親指、テンポ感~

【親指の意義】
両手演奏では、「親指を制するものはピアノを制する」と言われる。親指の機能を抑え込むことが求められる。
それに対して、
左手演奏では、「親指を生かす」演奏となる。一番強い指が、一番目立たせたい音の所に来て、メロディーラインと、伴奏ラインを区別することを容易にしてくれる。

【テンポの概念】
両手ピアノは、メトロノーム的なインテンポ演奏が可能。
左手ピアノは、跳躍があるので、弦楽器が弓の返しで間を取るように、自然とテンポの揺れが出る。

第8回 【編曲楽曲による成長】
ピアニスト…智内威雄
2018年8月22日(水)放送→ストリーミング 2018年8月30日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目 (すべて演奏は智内威雄)
バッハ=石坂真帆 「小前奏曲集第2巻」第6番 左手のピアノアーカイブ歴史編纂プロジェクトより 
ヨハン・シュトラウスⅡ=ゴドフスキー「宝石のワルツ」
マスネ=田中博之&智内威雄 「タイスの瞑想曲」
左手のピアノアーカイブ歴史編纂プロジェクトより 
バッハ=石坂真帆 「小前奏曲集第1巻」第7番 左手のピアノアーカイブ歴史編纂プロジェクトより 
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左手のピアノ音楽の歴史=編曲の歴史
そもそも編曲とは何か?どういう行為か?何のためにするのか?

芸術性を高めた編曲  代表作:ブラームスによる編曲
  • バッハ:シャコンヌ

技術を高めるための編曲  代表作:ゴドフスキによる編曲
  • ショパン:練習曲(作品10には全曲左手版がある。超難曲)
  • ヨハン・シュトラウスⅡ:宝石のワルツ(ウィトゲンシュタインがゴドフスキに協奏曲を委嘱したところ、なかなか出来ず、その代わりにこれが提出。編曲というよりゴドフスキ作曲に近い)
聴き手にアピールするための編曲  
ロマン派的な有名楽曲=オペラが代表格
名旋律をピアノ用に編曲するのは、今の映画音楽にも共通。
左手のアーカイブプロジェクトでも、超有名曲、名旋律の編曲も手掛ける
  • マスネ=田中博之&智内威雄 「タイスの瞑想曲」(ヴァイオリンの単旋律を、どのようにピアノに移し替えるか。一つの実験)
編曲の立場  シャコンヌの編曲が典型的な立場を示している
  • ブゾーニ編曲 シャコンヌ
  絢爛豪華。音大の試験楽曲の超定番。
  「もしバッハがこの時代に生きていたら」「もしバッハがロマン派の作曲家であったなら」
  時代を移し替えることで豪華にしている。
  • ブラームス編曲 シャコンヌ
  シンプル。
  「もしバッハが左手演奏をしたならば」
  バッハの時代そのままに。等身大のバッハ。
  バッハ自身が書いたであろうストーリーを拡張させる。よりバッハらしく。

左手のアーカイブ歴史編纂プロジェクトの方針
ブラームスの立場。
「バッハを知るための教材にもしてしまおう」バッハの手法を研究して編曲。
クラシックの演奏の型を学ぶために、あえて編曲するという立場。大胆な試み。

編曲プロジェクトメンバー:智内威雄、田中博之、山中哲人、石坂真帆、長谷部瑞希、有馬圭亮

【編曲のつくりかえ、つくり直し】=歴史的に継続して行われてきた
残念なこと=「編曲は劣ったもの」という固定観念
実は、編曲によって原曲の魅力が再発見できるという側面もある。
  • バッハ「小前奏曲集第1巻」第7番 原曲は、オルガンの足用練習曲。

第7回 【左手のピアノ音楽の復興普及活動】
ピアニスト…智内威雄
2018年8月15日(水)放送→ストリーミング 2018年8月23日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目
ゴドフスキー作曲「ワルツポエム」演奏:智内威雄
レーガー作曲「ロマンス」
演奏:智内威雄
川上統作曲「宮沢賢治の夜 銀河ステーション」演奏:智内威雄
J.S.バッハ『平均律クラヴィーア曲集』第1巻第1曲「前奏曲」(左手のアーカイブより)
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左手のアーカイブプロジェクトlefthandpianomusic.org)
左手の演奏動画の無償公開を始める
左手の演奏がどこまで可能なのかをわかってもらう(ピアノの鍵盤の端から端まで全て使えること等)
・ピアニストに曲目を知らせるため
・作曲者に、左手での演奏がどういうものかを知らせるため
・左手の技の伝承(挑戦者を焚きつけるような演奏が必要=賛否両論ある演奏が挑戦者を引き寄せる)

問題点
・運営費をどうするのか→CDによる募金活動(寄付者にCDを贈る)

運動の広がり
<芸術振興事業>
・作曲を委嘱して、ともに曲を作っていく→
『組曲・イソップ物語』等
<教育福祉活動>
・プロのピアニストのためだけでなく、初級レベルで楽しく弾ける入門用の曲を
  その弾き手が楽しむだけでなく、聞き手(友人・家族)が喜ぶ曲目を→童謡など
  「みんなで一緒に楽しく弾きたい」→発表会&新作発表&演奏者の交流のお祭りを
                  →「ワンハンド・ピアノフェスタ」開催
  「もっと上手くなりたい」→左手のためのピアノ教室主宰
・片手演奏を通して、多くの人に音楽の楽しさを伝えたい
・主役は音楽。弾き手は伝えるための黒子。音楽への恩返しとしての活動を模索中。

第6回 【超絶のピアニスト列伝(2)左手のピアニストを中心として】
ピアニスト…智内威雄
2018年8月8日(水)放送→ストリーミング 2018年8月16日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目
プロコフィエフ「左手のためのP協奏曲」第4楽章 
 演奏①ラップ(牧歌的。しかしこの初演がなければ曲は知られなかった)、
 演奏②クライネフ(バレエ音楽を彷彿とさせる跳躍感、軽快さ。洗練度が高い)、
 演奏③トラーゼ・指揮はゲルギエフ(超絶高速 トム&ジェリーの追いかけっこ?)

教育用の編曲「さくら」「かごめかごめ」、モンゴルの曲  演奏:智内威雄
マキシム・ゼッキーニ作曲「ナオウリ」(シャンソンを思わせる軽快な曲)
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<左手のピアニストたち>
1.ゲザジチ(史上初の左手のピアニスト・リストのパトロンとしても有名)銃の暴発で右手を失った貴族
2.ウィトゲンシュタイン(左手のピアノ音楽の父)資産家・父が鉄鉱で富を築く。弟は有名な哲学者
3.オタカー・ホルマン(チェコのピアニスト)右手の指を拳銃で撃たれてで失う。銀行で働く。マルティヌー、ヤナーチェクも彼のために曲を書く。半アマチュア・ピアニストとして活動。
4.ラップ(ドイツ)プロコフィエフの左手のためのP協奏曲を初演。そのことによってウィトゲンシュタインと対立するが、曲が世に広まる。
~以下は現代~
5.レオン・フライシャー  2004年にヒンデミットの片手のためのP協奏曲を初演 来年で90歳の名ピアニスト。
6.グラフマン ランラン、ユジャワンの師匠。

7.ラウル・ソーサ(カナダ)ラヴェル「ラ・ヴァルス」等の編曲も。転倒して右手を痛めたが、現在は両手でも演奏
8.館野泉 現在81歳。2004年から左手のピアニストとして活動。左手のための曲を林光や間宮芳生(みちお)に委嘱  

<左手のピアノ曲紹介に熱心な両手のピアニスト>
1.ゴドフスキ
2.アムラン
3.ジャン・デュベ(カナダ) リスト国際コンで1位
4.マキシム・ベッキーニ(フランス)左手のスペシャリストに近い 作曲も


智内氏の主張
  • アマチュア・ピアニストを育てる重要性。アマチュアの層の厚さが音楽世界を動かす。智内氏は、ワン・ハンド・ピアノ・フェスタを主催。
  • 委嘱した曲を広める重要性。よりよい循環を目指し、同じ曲を違う人が違う解釈で演奏するという多様性を大事にしたい。
  • 左手のためのピアノ曲には課題があり、クリアする必要がある。これらは次回以降に。

第5回 【超絶のピアニスト列伝(1)両手のピアニストを中心として】
ピアニスト…智内威雄
2018年8月1日(水)放送→ストリーミング 2018年8月9日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目
ソフロニツキーの演奏による、スクリャービン作曲「前奏曲と夜想曲」より前奏曲
智内威雄の演奏による、ゴドフスキ作曲「エレジー」
智内威雄の演奏による、リパッティ作曲「左手のためのソナチネ」リパッティ自身とは異なる解釈(戦争真っただ中の作曲という時代背景から、リパッティよりも速い速度で)
クライネフの演奏による、プロコフィエフ作曲「ピアノ協奏曲第1番」第1楽章
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【両手で演奏する歴史的ピアニストによる片手演奏、その関わり】

左手の演奏は、1つの技。
左手のピアノ演奏=障害、というわけではない。
クラシック音楽の魅力の一つは、その演奏の多様性にある。
同じ楽曲を、違うタイプの演奏家が違った解釈で演奏する。試みにカテゴリ分けをしてみたい。

<情熱的演奏>
1.アルフレッド・コルトー
2.サンソン・フランソワ  情熱的名演   ラヴェル作曲 左手のための協奏曲
3.クン・ウー・パイク  プロコフィエフのコンチェルト


<構造美・冷静な演奏>
1.ホロヴィッツ テンポよりも音色で曲想を作る 耳でよく聴く演奏 スクリャービン 
2.ゴドフスキ  
3.アムラン  ゴドフスキ編曲・ショパンの練習曲を全曲録音 編曲者としてもすぐれている(チャイコフスキーの「子守唄」) 美しい音の連なりを堪能できる
4.ディヌ・リパッティ 病と戦争に活動を制限された悲劇のピアニスト バランスのとれた演奏 ストイックな濃縮された音色 バッハ「シチリアーノ」 ベヒシュタインを美しく紡ぎ出す 「左手のためのソナチネ」を作曲(1941年)&演奏→後世のピアニストがその真似をしてしまう


<ロシアン・ピアニズム>演奏技術の頂点 コンポーザー・ピアニストも多い 社会的メッセージをこめる
1.アントン・ルービンシュタイン
2.ラフマニノフ  スタインウェイの性能向上に貢献 ピアノにオーケストラ的な響きを求める
3.スクリャービン
4.プロコフィエフ 左手のためのピアノ協奏曲(第4番)ウィトゲンシュタインの委嘱作品 音をどうまとめ上げるかは演奏家の力量次第。プロコフィエフの死語に初演された。
5.
ソフロニツキー(リヒテルが「私が天才というならあなたは神だ」と述べた、ロシアの伝説的ピアニスト)
6.リヒテル  内向的な響きを持つ


感想:ここに挙げたピアニスト全員が「左手の演奏」を残しているのかどうか曖昧なり(特に「ロシアン・ピアニズム」のところ)。「ピアニストのカテゴリ分け」が今回の主題??話の軸がちょっとブレたように感じます。

第4回 独自の芸術分野として 【戦争と音楽(ウィトゲンシュタイン)】
ピアニスト…智内威雄
2018年7月25日(水)放送→ストリーミング 2018年8月2日(木) 午後3:00配信終了
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【演奏曲目】
ショパン作曲/ ゴトフスキ編曲    練習曲作品10-1
シュールホフ作曲 「組曲」より  即興曲   退廃芸術の烙印をナチスに押され若くして死去
ボルトキエヴィチ作曲   ウェディングソング

左手のピアノ音楽の巨人、パウル・ウィトゲンシュタイン
(高名な哲学者、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの兄)

第一次大戦で右腕を負傷し、切断。
ロシアでの捕虜生活のうちに既に「
左手のピアニストになる」と決心
ウィトゲンシュタイン家が気に入っていた作曲家、ラボーに作品を依頼

ハプスブルク家が衰退していく時期
ウィトゲンシュタイン家は、芸術の大スポンサーであった。
庇護を受けた芸術家には、画家クリムト、詩人ハイネらがおり、音楽家との交流も深かった。ゴドフスキのウィーンでの成功を間近に見ていた。
美的感覚を養う環境に育ったパウルは、鍛え上げられた美的センスで次々と左手のための曲を委嘱。

<協奏曲の委嘱>
  • 第1期  1923~24 年
ヒンデミットの作:当時は演奏されず。初演は2004年 (演奏:フライシャー)
シュミットの作:成功  ベートーヴェンのスプリングソナタをもとに
コルンゴルトの作:ウィーンで最も注目された作曲家の一人 大曲の協奏曲を書いた
  • 第2期  
リヒャルト・シュトラウスを呼び寄せ、協奏曲を2曲委嘱
ゴドフスキ の作:協奏曲は書けず、ソロ曲  宝石のワルツを書く
ラヴェルに委嘱した協奏曲の原案
  • 第3期
ラヴェルの協奏曲完成


パウルは、休暇を取らないほどの熱心さで、教育活動にも力を入れる。
芸術に対する目利きであり、曲の委嘱者という立場で音楽史を作った1人。
<彼の問題点>
生み出された作品を孤立させてしまった

<委嘱のしかたの特徴>
作曲家に自由に書かせている(自分の演奏技術に合わせろと押し付けることはない)
難曲にも挑む姿勢  弾けないと改変もしてしまう


今年創設したコンクールにも彼の名前を冠している
ウィトゲンシュタイン記念 左手のための国際ピアノコンクール

第3回 【芸術作品とは】 
ピアニスト…智内威雄
2018年7月18日(水)放送→ストリーミング 2018年7月26日(木) 午後3:00配信終了


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演奏曲目:
ツェルニー 「左手のための24の前奏曲」最初の数小節
(左手だけで弾ける部分)
同     「二つの練習曲」
ライネッケ 「ピアノ・ソナタ」第1楽章
スクリャービン「前奏曲と夜想曲」より前奏曲
サン=サーンス「6つの練習曲」より第5番エレジー 


左手のためのピアノ曲分類

(1)指の練習のために書かれた楽曲
  • C.P.E.バッハ  250年ほど前の古典派「片手のためのピアノ曲」右手でも左手でも演奏可。
  • カルクブレンナー ショパンに影響を与えた名ピアニスト 孫弟子にサン=サーンス リストに先駆けてベートーヴェンの曲をピアノ曲に編曲
  • ツェルニー 「左手のための24の前奏曲」両手での演奏曲だが左手練習用(ショパン「革命のエチュード」も同様)
          「二つのピアノ練習曲」(左手だけのため)→初めて初見で弾いたがいい曲。レパートリーにしたい。
(2)芸術表現の手段として左手を選んだ楽曲
  • ライネッケ  ドイツ系の音楽 拍を刻む特徴 乗馬など湧き上がる情熱を表現
  • ルイゼ・アドルファ・ルボー  演奏後にガッツポーズしたくなるような曲 ドイツ 女流作曲家 クララ・シューマンに師事
  • ブラームス  「シャコンヌ」 原曲を1オクターブ低くしただけとも言われるがそうではない クララ・シューマンが手を痛めたことで作曲したと言われる 
【ピアノ演奏技巧として】アドヴァイス
ヴァイオリンをピアノに移し替えるのは難しい。演奏者が楽譜通りに弾いてもダメ。演奏者による差異が大きい。
音の数が少なればなるほど演奏者の芸術性が見えてしまう。少ない和音をどう効率的に鳴らすか。
原曲とブラームスの共通点が多い(威厳 情熱的猪突猛進 複雑な構成→ブラームスのピアノ曲として演奏するとよい)。
ブゾーニ編曲版の華麗で分厚い音がなくても、美しい曲になる。
実は、師匠のロベルト・シューマンも右手の局所性ジストニアであった。彼に捧げたとも考え得る。
  • スクリャービン 「前奏曲と夜想曲」初期の代表作と言える名曲では? 低音から高音までムラなく使う。ペダリングを学ぶお手本になる。スクリャービン自身が右手の局所性ジストニアであった。
【ピアノ演奏技巧として】アドヴァイス
両手の楽曲とまったく同じ弾き方ではない。楽器自体にピアノの音を響き渡らせる技術が必要。
ピアノの音域の役割をしっかり意識する必要がある。 
低音の扱い方をシビアに見つめる。
高音は低音よりも通りやすい性質があるので、この特質を生かす。PPの指示でも少し強くアタックするなど。「PP」は音量ではなく「静けさ」の指示。
楽曲のキャラクターの描き出し方=どこが悲しいのか、どこが楽しいのか。→スクリャービンの楽曲はここがはっきり表れている名曲

  • サン=サーンス 「6つの練習曲」ラヴェルが左手のための協奏曲を作曲するときに参考にした曲

第2回【左手の音楽とは】
ピアニスト…智内威雄
2018年7月11日(水)放送→ストリーミング 2018年7月19日(木) 午後3:00配信終了


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演奏曲目:
カルクブレンナー 左手のための練習曲
ルイーゼ・アドルファ・ルボーの曲
バルトークの曲?
(紹介とは異なり、実際に流れたのはグリーグの「アリエッタ」ではないかと…) 

左手のための鍵盤楽器の楽譜を残した作曲家、その分類

(1)バロック時代の人
  • C.P.E.バッハ(カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ)
  • ツェルニー
  • カルクブレンナー 無駄を排除した奏法。ショパンが彼のことを尊敬していた。
(2)自分の芸術表現手段として左手を使った人
  • ブラームスによる編曲  シャコンヌ(左手のための編曲版)芸術性が高い
  • ライネッケ(ライプツィヒ音楽大学教授として、グリーグ、ヤナーチェク、滝廉太郎にも影響を与える)  ピアノ・ソナタ(全4楽章)
  • ルイーゼ・アドルファ・ルボー(女流作曲家)
  • サン=サーンス   左手のための練習曲
  • スクリャービン(作曲家自らが局所性ジストニアを発症)
(3)技を求め、競い合うための作品
  • アレクサンダー・ドライショク(自分の技術を誇示するために書いた)
  • フマガルティ(イタリア・オペラの主題を編曲したものが多い)
  • ゴドフスキ(異様なテクニックの持ち主。片手で三声、四声を扱う)
  • バルトーク
(4)癒しを求めた作品(戦争で腕を失った人、病に倒れた人による委嘱で作曲)
  • ゲザジチ(F.リストのパトロン)
  • ウィトゲンシュタイン
  • ホタカー(東欧)

「左手のためのピアノ曲」の意義、魅力
  • ピアノの「響き」を堪能するために効果的
  • ペダルの練習になる
  • 技術を学べる(①片手で複数の旋律を弾く ②脱力奏法)

なぜ右手のための曲は、ほとんどないのか?
  • 建築同様、ベースとなるのは低い音(=左手)。低い所から立ち上がる音楽が自然。
  • 「右手を壊した人」は、復帰するまでの障壁が高い。左手を壊した場合は、その左手で「ぶんちゃっちゃ」さえ弾ければ、なんとかステージ復帰も可能である。
  • 右利きの人が多いので、事故などで右手を失う人の方が多い。

第1回【プロローグ】
ピアニスト…智内威雄

2018年7月4日(水)放送→ストリーミング 2018年7月12日(木) 午後3:00配信終了
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演奏曲目:
グリーグ「アリエッタ」
スクリャービン「前奏曲と夜想曲」より前奏曲


智内氏の人生ふりかえり(幼少時から現在に至るまでのピアノとの関わり)が主な内容でした。
  • 父が画家、母が音楽家という家族で、朝5時前に起床してやりたいことをやる家風だったため、ごく自然に登校前に音楽(ピアノの練習)をすることが身についた。
  • 専門的に学ぶ子供のための音楽教室に7歳で入り、技術を磨くことに喜びを覚えた。
  • 埼玉県蕨市の中学校での学内音楽コンクールでピアノ伴奏を担当し、「よい演奏をすると人を喜ばせることができる」と初めて知った。この経験が人生の中でとても大きかった。
  • 音楽高校時代は、授業前の学内音楽図書館通いに没頭。遅刻が多すぎて特待生を取り消されたほど。
  • 10代でのイタリア留学で鮮烈な驚きを覚えた。町の香り、石造りの建物での反響の迫力、イタリア人の美意識(ピカピカの新しいバイクを「美しい」と賛美する老婦人)が印象深い。
  • 個人レッスンを主体とするピアノでの海外留学は、自分に合う(音楽に対する感覚を共有できる)先生に出会えるかどうかが鍵。失敗すると年月を棒に振ってしまう。
  • 幸い、ぜひ師事したい先生(北欧出身のネックレベル先生)に出会い、その先生のすすめでドイツに留学。その音大ではコンクール・ツアー(コンクールからコンクールへと渡り歩き、賞がとれたら帰国する)への参加が一般的で、学内よりコンクールでクラスメイトと会うということもあった。この体験で、中規模国際コンクールでの入賞、大規模国際コンクールへの参加、とステップアップしていった。
そして、右手に「局所性ジストニア」を発症。
それまで楽に弾けていた曲が弾きにくくなり、ドレミファソラシドさえ弾けなくなるに至って、先生に相談したところ、すぐ受診するようにすすめられます。
受診したのは、大学付属の音楽家の病気のみを専門的に診る機関。
ここで「局所性ジストニア」という病名が告げられ、ベルリンの施設でリハビリに励んだとのこと。
「壁があると乗り越えたくなる性格」で、病名を告げられて「よっしゃー!敵は見えた!」と思ったという話に圧倒されました。。。

こんなに前向きな氏が
「頭の先から足の先まで、まっしろになって何も考えられなくなった。自暴自棄になることすら、できなかった」
と表現したのは、主治医に「完治した」と告げられたとき。
このとき、日常生活には支障がなくなっていたものの、右の手指を無意識に動して演奏できる、というレベルにはほど遠かったのでした。
コンサートピアニストとしてのステージ復帰を「完治」と考えていた氏には受け入れがたかった現実。

実は、症状が消えたわけではなく、現在も時折「こわばり」を感じるのだとか。
演奏会後のサイン会などで、サインする手を止めて聴衆と話をしているときなどは、この「こわばり」を解消させようとしているときなのだそうです。15秒ほどで解消させる技を身につけているから、と。

「左手のピアニスト」と自ら名乗り、演奏活動を本格化させたのは、2013年から。
阪神淡路大震災の遺族の方たちのコミュニティとの出会いから、今は神戸に本拠地を置いて活動されているとのこと。
音楽の役割について、教育や福祉のフィールドからも考えたい、もちろん左手のためのピアノ曲の研究もすすめて普及させたいと、改めて前向きに語られていました。
今年2018年11月には、第1回左手のためのピアノ国際コンクールも開催予定だそうです。

たいへんお話の上手な方です。
人生を自ら切り開いていく力にあふれた方だなあと思いました。
音楽とは……生き方とは……等の論理やいかに。今後の展開が楽しみです。

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