第9回【「楽器」という静物 ブラック「マンドリン」/ヴィヴァルディ「マンドリン協奏曲 ハ長調」】
2017年8月30日(水)放送→ストリーミング 2017年9月7日(木) 午後3:00配信終了
実践女子大学教授…六人部昭典


ブラック作 1910年「マンドリン」縦72㎝ 横58㎝ 
ロンドン テートギャラリー蔵  (画像はTATEより)
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ジョルジュ・ブラック 
1882年パリ近郊生まれ →ルアブル(デュフィと同じ地)で育つ。デュフィの5歳年下
パリに赴き、ピカソとともにキュビズム運動に励む
展開時期
①初期キュビズム:風景などを立体や円筒形の幾何学的形態に還元
②分析的キュビズム:透視図法(遠近法)に基づく空間を解体
③総合的キュビズム:コラージュの手法
「マンドリン」は②分析的キュビズムの代表作

マンドリン 17世紀の初めまでにできる。マンドールから分離
 ナポリ型マンドリン→現在の形に至る

キュビズムと楽器の形についてのブラックのことば
「楽器が身の回りにあったから」
楽器というモチーフは人が触れることで生命を帯びる点に惹かれた」
モチーフの形態を捉える
「対象をただ見るだけでなく触れたい」という思いがキュビズムの出発点

1909年「楽器のある静物」縦50 横61 
画面中央にマンドリン 左横にラッパの上半分 背景に楽器
二つの視点から捉え、少しゆがんだ形を作る 対象に接近 ①初期キュビズム

1909年「ギターとコンポート皿」やや縦長の画面
ギターの手前に果物 後ろにコンポート皿 こぶりの楽譜モチーフ
コンポート皿の足と下がつながっていない 複数の視点は空間の非連続となる

1910年「マンドリン」
対象を捉える視点の多様化 題名がなければマンドリンとわからない

ルネッサンス時代に誕生した正遠近法は「人間の理性」を示す。
これが20世紀初めのキュビズムにおいて壊される。
身の回りの世界の把握法が崩壊。視覚に偏らない把握法。
対象を「まるごと把握したい」と願い、いくつもの視点から捉えて画面上に再構成する。
「6歳の子どもになったつもりで、線路の上を走る列車を描く」ような捉えかた
走る列車は水平の視点から、遠くまで伸びる線路は俯瞰する視点から描く。

絵は一つの視点から描くものだというのは固定観念。