日本画のことなど、何もわからないのですが、
友人たちから「いいよ!」と聞いて、会期末間近の特別展に足を運びました。
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鏑木清方(1878-1972)は東京神田の生まれ。
展示室に入るや、すぐに並んでいたのが、

《明治風俗十二ヶ月》(1935 年)。

え?明治だよね?江戸じゃないよね?
と思ってしまった私。
そうですよね。
昭和に入ってからも、いえ、戦後もしばらくは普段着は着物だったのですよね。
考えてみたら、私の祖母だって、私の幼少時は普段着の着物をよく着ていました。
こういう感覚、忘れてしまっていたなあ。

12か月それぞれ、季節の風俗が生き生きと描かれていて、
これ、気に入りました。
例えば10月は、夜8時頃を指す掛け時計(近代の象徴ですね)の下で、
和服姿で針仕事をする女性二人と、
その横で小さなちゃぶ台のような机に向かって勉強する丸刈り頭の少年。
もちろん、椅子なんてなし。和室に座り込んで、鉛筆ならぬ「ふで」使用。
うう。ほのぼの。勉強の秋。
こういう日本の風景に、思いっきりノスタルジーを感じちゃいました。

展覧会の呼び物となっている
《築地明石町》
さすがの美しさでした。
美女三人を描いた作が三つ並んで掛けられているのは、まさに圧巻。
中でもやはり、中央の明石町が美しかった。
彼女が来ている緑色の和服の布地が再現されて展示されていましたが、これまた素晴らしい。

清方の描いた絵巻物もありました。
絵はもちろんですが、文字の美しさにも息をのみましたよ。
明治、大正時代って、こういうものが生きていたんですね。

清方って、フィンセント・ファン・ゴッホの25歳年下。
(ちょうどゴッホを描いた小説を読んだばかりなので、思った次第)
清方は浮世絵師ではなく、
「挿絵画家として画業をスタートさせ」て「美人画で上村松園と並び称された日本画家」ではありますが、浮世絵の精神は着実に受け継いでいる芸術家でしょう。
そう考えると、
ゴッホの時代はもちろん、その一つ下の世代でも、
日本での浮世絵、日本画って、まさに「今、生活の中で生きているもの」だったんだなあ
なんて思いました。

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画像は、美術館4階の「眺めの良い部屋」。
ここでしばらく、ぼーっとしてました。
ゆっくり過ごしたのは、初めてだったかも。東京国立近代美術館。
おすすめです。

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