第5回【商業音楽のれい明Ⅱ~ガーシュインの登場と映画・ラジオの関係】(5月3日放送)
カルチャーラジオ 芸術その魅力(ラジオ第2 毎週水曜 8:30pm | 再放送 毎週水曜 10:00am)
<シリーズ> アメリカン・ミュージックの系譜 慶応義塾大学教授…大和田俊之
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「ミンストレル・ショー」:19世紀に始まった、アメリカ最初の興行的ショー
白人の芸人が顔を黒く塗って黒人のフリをするもの
 (現代の目でみると実に差別的な内容→公民権運動の盛り上がりの中で姿を消す)
これが音楽産業にも影響→音楽産業を支えたユダヤ人作曲家が黒人音楽の模倣をする
ラグ、ジャズ、と呼ばれたアメリカ音楽を作ったのはユダヤ人

<近年の研究によると…>
19世紀から続くミンストレルショーに、ユダヤ人が参入することで、
ユダヤ人は黒人ではなく、白人グループに属することを表明したという側面がある
ユダヤ人が、白人としての地位を確立し、相対的な階級上昇を遂げた

☆ガーシュウィン(ユダヤ系ロシア移民の子)
「スワニー」1919年
語り手はアフリカ系アメリカ人
白人の芸人が黒人の真似をして語るのが前提
スティーブンフォスター(アメリカ音楽の父と呼ばれる)の曲をパロディ化して作曲

「ラプソディインブルー 」1924
ポールホワイトマン楽団(当時はジャズ・バンドとして主流派だった)が、
ガーシュウィンに発注して作らせたもの。
この楽団はシンフォニック・ジャズ(欧州に負けない、洗練されたジャズ)を演奏
第一次大戦後にアメリカの国際的地位向上
→「世界にアメリカ文化を!洗練させた形で聞かせたい!」という時代的欲求
文学なら、メルヴィルの『白鯨』
→「アメリカにシェークスピアに匹敵する作家がいた!」がキャッチコピー

☆歌唱法の変化  マイクの発明が大きな影響を及ぼす
マイク発明前:「ベルカント唱法」訓練をうけた歌手だけが声を届かせられる
マイク発明後:「クルーナー唱法」訓練を受けていなくてもステージに立てる
もともとヨーロッパ起源のものの形が変化していく
オペラ(叙事詩的、壮大)vs ミュージカル(叙情的、リリカル)

ハリウッドでは、ミュージカル映画が一つのジャンルになる
不自然さを正当化するために、男女の関係自体を歌に盛り込んでいく
ティンパンアレイの音楽が、アメリカ文化の一つの到達点を作った
ヨーロッパ音楽(重厚)vs アメリカ音楽(大量生産&大量消費の軽さ、エレガンス)

1939年「オーバーザレインボー」(ジュディ ガーランド)映画『オズの魔法使い』
1935年「チーク トゥ チーク」(フレッド アステア)