2019年3月1日(金)放映
反田恭平 オール・ショパン・プログラム
  • アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 作品22
  • マズルカ ハ短調 作品56 第3
  • ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58
~2019年1月30日 CHABOHIBA HALL(東京都立川市)~

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今年1月30日の収録といいますから、つい最近ですね。
録画していたものをやっと見る(聴く)ことができ、演奏された音楽の風格に、びっくりしました。

随分以前から活躍されているような気がしていましたが、
デビュー・リサイタルが2016年ということは、まだデビューして3年ほどなんですね。
1994年生まれ。まだ20代前半。
その若さながら、語りも的を射ています。

  • 7~8歳ごろから弾き始めたショパンだが、どういうふうにショパンを弾くのが正解~正しい弾き方~なのか、それをちゃんと学びたくてポーランドへ行った。徐々に自分のものになってきているかなとは思う。その成果を今年のツアーで、公の場で届けたかった。
この語りの後に演奏されたのが、アンスピ大ポロ。
テンポの揺らし方、実に説得力あり。
なんとなく、反田くんは「激しくバリバリ」演奏するというイメージを持っていたのですが、全く違いました。逆に、一般には「バリバリ」の箇所に柔らかく入り、激しい箇所を絞っているような。
聴いていて、実に心地よかったです。


マズルカについて
  • ポーランド留学の生活は、ただピアノを弾くだけではない。学校(ポーランド国立ショパン音楽大学)の隣のショパン博物館にはショパンの自筆譜があり、そこには彼が実際には「使用しなかったアイデア」も書かれていて、毎回発見がある。
  • 当時、ショパンの弾くマズルカを実際に聴いた人の記録もある。彼は、拍子にこだわりつつ、ルバートを効かせる演奏をしていた。ルバートとは、揺らして揺らして、なんとなく馴染ませていく奏法だが、この言葉が一番しっくりくる。大木があって、幹があって、枝があって、葉がある。風が吹いても大木は動かず、木の葉たちだけが動いている、それがルバートのイメージ。
深いです。
ルバートの心地よさに酔いました。
揺れる歌心、お見事。

ソナタ第3番について
  • 晩年に近づいた時期の作品で、よりバッハの対位法などを忠実に再現しており、まとめるのは難しいけれども弾きがいがある。回想シーンもすばらしい。短い第2楽章にもさまざまなモチーフが入っている。終楽章の3回目の主題が来ると「来た、来た、来た!」となる。ショパン自身の生涯が詰まっているような作品。

ソナタ第1楽章では、今まで気づかなかったような音列が響き、それによって対位法に気づかされるような箇所も。なるほど、けっして奇をてらったのではなく、分析に基づく解釈なのだなあと思いました。
おそらく、彼の演奏時間はどちらかというと長いほうなのでは。
丁寧に、というか、深くまで沈潜して演奏していることの反映として、テンポは速めというより遅めになる箇所が多いような。
でも、「幹」がしっかりしていて、揺れ戻しともなる速いパッセージとの兼ね合いが絶妙です。
超速箇所のコントロール技術も見事ですね。安定感も抜群です。

唸らされました。ううむ。巨匠かも。