MinJinLee 著   
(National Book Award Finalist) (English Edition) Kindle版
2017年08月刊
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何年ぶりかで、英語の小説を読破しました。

日本が韓国を併合していた時代、誠実な、でも口蓋裂があり足が不自由な男性と、没落した家柄の15歳の少女が見合い結婚をしたのが1911年。この夫婦にやっと生まれた娘・Sunjaが市場で見染められ、恋に落ち、妊娠し…。ところがこの相手Koh Hansuは大阪に日本人の妻と娘たちを持つ韓国籍の既婚者。
そんな折、Sunjaの母が切り盛りする民宿で病に倒れ、看病を受けた若く敬虔な牧師Isakは、大阪で新生活を始めるにあたってSunjaを妻として同伴しようと決心し、Sunjaもそれを受け入れたのでした。

以来、夫Isakの死後もずっと日本で生活することになるSunja。
ストーリーは、彼女の息子Noa、Mozasu(聖人Noah、Mosesから)
Mozasuの息子、Solomonの世代まで(1989年まで)、ストーリーは続きます。
息子を、孫を、ずっと見守りつつづけるSunja……壮大なる大河ドラマです。

本のテーマは「在日」ですが、それ以外にも多くのマイノリティが登場します。
身体障碍者(Sunjaの父)、精神薄弱者(Mozasuの親友の弟)、原爆被害者(Isakの兄)、部落民(肉屋の祖先や一般的記述として)、LGBT(Mozasuの親友)、売春婦を母に持つ娘、不倫により故郷を追われた女性、都会で性産業に従事する娘、、、
そして、マイノリティを切り捨てようとする社会、支配層、無知な一般人の言動が、さりげなく、あちこちに盛り込まれます。

それから、アイデンティティの問題も。
重要なのは、血筋か、育ちか?
愛情とは?権力とは?

決して被害者意識、日本糾弾意識で書かれた物語ではありません。
読んでいて不快を覚える箇所が、まったくありませんでした。
それどころか、最初から最後までストーリーの続きが気になって、わくわくしながらページを繰りました。お見事だと思います。
ヤクザの政治力も絡んで、すごい勢いでストーリーが展開していく箇所もいくつか。
嫁・姑問題はまったく出てきません。仲間とみなした者たちへの優しさは特筆ものです。

戦中の差別やむごい仕打ちよりも、
1989年の日本人の発想、日本社会は変えられない、「仕方ない」、という記述が、胸に突き刺さりました。
2019年、30年も経った今も、確かにそうかもしれない……という思いが拭えません。
でも、それではいけないと強く思います。

「パチンコ」というタイトルが意味するもの、
それは最後まで読み通して、初めてわかるもののように感じました。
多くの人に読んでもらいたい、そしてこれを契機にいろいろ考えたり語り合ったりしたい、と思いました。
筆者はアメリカで歴史学の博士号を取得した、韓国生まれの女性です。

そうそう、この小説の中の舞台を紹介する、こんなサイトもありました。
おすすめです。