小沼丹 著  創元推理文庫  2003年刊  
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 文庫化されたのは2003年ですけれど、初出はなんと昭和32年。婦人雑誌に連載されたものだそうです。
「おぬまたん」という優しげな響かから、女性作家かと思ったらさにあらず。 早稲田大学文学部の男性教授だったのでした(1918-1996年)。

さて、本作の主人公はA女学院の若い女性教師、ニシ・アズマ嬢。赤い縁の大きなメガネが、彼女の容貌を台無しにしている……って、冒頭部のこのあたりからすでに共感度いや増しにアップ。

彼女が日常生活の中で気づいた「ナゾ」を、明晰なる頭脳で推理してみせる
という短編が集まったもの。
「~ではありませんことよ」
といった、大正ロマン風の言葉遣いをはじめ、大正も引きずった昭和のムードがここそこに。
推理とはいえども凄惨さは感じられない、ほんわかとした一種の青春小説でした。

あ、小沼丹、今年で生誕100年なのですね。
それで、あちこちで名前を見るのでしょうか?今頃気づいた私です。