第11回 【両手演奏と病から考えるピアノ演奏方法】
ピアニスト…智内威雄
2018年9月12日(水)放送→ストリーミング 2018年9月13日(木) 午後3:00配信終了

演奏曲目 (演奏:智内威雄)

リスト作曲 ハンガリーの神
リパッティ作曲 ソナチネ 第2楽章、第3楽章 
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リハビリから見る身体の使い方
観察からうまれたピアノ練習法 、教授法

(1)両手の演奏家から学び考えるピアノ奏法
★「ピアノという打楽器を歌う楽器にする」ホロヴィッツ
歌とは?
何かしら変化をすることが歌である
ピアノにできないこと=単音でクレッシェンドする(ピアノは一旦音を出したら、あとは減衰するだけ)

ピアノにおける「変化をさせる」技とは?
ピアノにできる変化=音量と速度
自然な歌=自然な音量と速度の変化

★変化は、身体の重心移動で生み出す
  1. 指の重心移動
  2. 手首の重心移動
  3. 上半身から肘を伝わる重心移動
歌や管楽器で言う「息のいれ方 」は、ピアノにおいては「重心移動のしかた」
晩年のホロヴィッツは、重心移動はほとんど使わなかった。
爆発と静寂と、恐ろしいほどに調整されたスタインウエイのピアノ

★指の役割
レガート
指は万能ではない
音量、エネルギー源は他から補った方が良い

鍵盤にフィットさせるために指の形を変える
脱力したい 
過度の上下運動は、手がこわばる元
手の重心移動で、次の音を弾きやすく = レガート奏法

指の第1第2関節を引っ掻くような動作で、レガートっぽくする人がいる
これはよくない 手を硬直させたまた行う動作になる
局所性ジストニアの症状を悪化させる

★ポリーニはペダルの名手

★ギーゼキング または チェルカスキー
肘と手が逆方向に動くと、速く弾ける
映画「ベスト・キッド」の窓ふき動作

(2)リハビリに結びつけた教授法
練習時間を短くする
練習=ピアノに合わせて変化させていくこと
変化をよく観察する=長時間の練習では不可能

変な癖  力を入れ過ぎる
必死に練習する生徒に注意を払う

短期的な結果ではなく、長期的なメニューを考える
夢中で演奏していると、悪い癖も伸ばしてしまう そこに気づいてあげる

先生は、自分のコピーを作ろうとしないこと(教える側が好きなメニューではなく、その人を伸ばしていけるメニューを考える)
一つの方法が万能ではあり得ない
生徒との双方向の情報交換を。
相手の素質・個性を見抜くには、豊富な取材力が必要:レッスン=取材(その人の個性を探す)
生徒が自分の演奏(自分の症状)に自覚的になる

無駄にピアノでトレーニングしない
「どう表現したらよいのか」
いきなり弾き始めない。まず考える。楽曲を整理する。
分類(分ける作業)→ 楽曲を分析 →ようやく表現 ここでやっとピアノを使う
どうやったら楽しそうな音になるのか

自分の身体の癖を知る  演奏法の探求
直すべき癖  →音楽的表現を妨げる癖
直さなくていい癖  →音楽的表現を妨げない癖
障害を引き起こしやすい癖は直した方が良い  例)力み

一生涯演奏をつづけるには「手伝う」こと 「教える」のではない
技の伝承の輪が続いていけば、嬉しい。