伊坂 幸太郎/著 幻冬舎 2014年刊(文庫本2017年刊)
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書名に惹かれて借りてみました。
結論として、モーツァルトとはほぼ関連ありませんでしたが。
なんでも短編集最初の「アイネクライネ」は、

ミュージシャン、斎藤和義さんから、「恋愛をテーマにしたアルバムを作るので、『出会い』にあたる曲の歌詞を書いてくれないか」と依頼をもらったのが始まりです。「作詞はできないので小説を書くことなれば」というお返事をし、そうしてできあがったのがこの短編なのですが(後略)

ということなのだとか。
で、出会いについて思いを巡らす会話の中で「小さく聞こえてくる夜の音楽」(小夜曲)からの連想で、モーツァルトのこの曲が出てくるのですが、
「あんな、能天気な曲、夜に聞こえたらうざくてしょうがねえじゃん」
「まあ、確かに」

で終わり。あらら~。

伊坂幸太郎の作って、私の先入観では次のような感じです。
軽いノリであっという間に人が続々と死んでいって、最後の最後に
「どーだ!すげーだろ。これで全部つながるんだぜっ」で大団円(と言ってよいのか?)。

冒頭の短編「アイネクライネ」に出てきたのは次のような人物です。
  • 語り手(佐藤)
  • 語り手の友人夫妻である小田一真&由美、娘の美緒
  • 語り手を街頭インタビューをする羽目に陥らせた同僚、藤間氏とその家族
  • 駅構内の画面で、タイトルマッチを戦っていたボクサー
これらの人々の人間関係が、続く「ライトヘビー」「ドクメンタ」「ルックスライク」「メイクアップ」でそれぞれ広がっていき、登場人物の人数が続々と増え、最後の「ナハトムジーク」で、はい、お約束通り回収されました。
ただ、あちこちで発表してきた短編を収録し、大団円「ナハトムジーク」だけ加筆して発表した本というだけあって、最後の話の飛び方が凄まじかったです。
人物関係表が欲しい!と思いましたし、回収されずに放置された部分もあるのでは、とも。

また、細かいところですが、冒頭すぐの次の表現にひっかかりました。
街頭インタビュー場面です。

丁寧なナンパ氏と警戒されているのか、もしくは、怪しい商品勧誘だと思われているのか、どちらにせよ声をかけどもかけども、誰も協力してくれない。(p.11)

えっ?「かけどもかけども」???
「かける」なら「かけれどもかけれども」でしょう?
「かけどもかけども」では「書けども書けども」の意味になってしまうのでは?
だって、
「見ども見ども」じゃなくて「見れども見れども」、
「着ども着ども」じゃなくて「着れども着れども」ですから。
それとも、最近では、
「かけどもかけども」「見ども見ども」「着ども着ども」が一般的になってるんでしょうか?